66 / 389
雪虫4 14
しかたなくオレは雪虫を抱えたままクッションへともたれかかった。
膝の上に雪虫を置いて……間に挟まれて悲鳴を上げている息子スティックはこの際、無視だ。
「少しだけ休憩させてもらってもいい?」
「んー……」
「昨日嬉しくてよく眠れなかったんだ」
「しずるも⁉」
「オレも」
と、言うことは雪虫も今回のコレを楽しみにしててくれたってことだ。
「だから少し休んでから、再開 じゃ、駄目?」
オレが休みたいんだ と言うことを前面に出して休憩を求めると、雪虫はちょっと唇を尖らせたけれどこくりと頷いてくれた。
「雪虫とはなれないなら、いいよ」
「離れない! それはない!」
言い切って小さな体を抱きしめる。
素肌同士で触れあっているから普段よりも熱い体温に不安になって、つい首元に触れて確かめてしまう。
発情期だから平常時よりも体温が高くなるとは聞いていたけれど、それでも程度がある。
今この瞬間、雪虫の体を気遣ってやれるのはオレだけなんだ……と、慎重に異変がないか様子を窺う。
「 しずる」
「あ ……どした?」
体温は、脈拍は、どこか無理をしているところがないか、そんなことに夢中になっていたせいか雪虫がオレを見上げているのに気づかなかったようだった。
いつもより潤んだような蒼い色の瞳は熱を含んでいると言うのに、オレへの不満を湛えてキラキラとしている。
「どうして、雪虫のことみてないの」
ぐりぐりと額を胸に押し付けられて、ごめん……って漏らすしかない。
「雪虫のことが心配で……」
「心配でも、みてて」
すり寄られて、柔らかな頬が肌を擦るたびにぞわぞわとした熱が駆け上がってくる。
口の中に溜まる唾液の量も尋常じゃないし、血の流れが良すぎるのか眩暈がする、下半身は雪虫に気づかれていないのが不思議なくらいぬるぬると先走りが垂れていて……
今すぐにでも喰らいついて、貪って、思う様その体を堪能したい。
瀬能が処方してくれた薬を飲んでいると言うのに沸々と湧きあがる衝動が消えず、ふぅふぅと繰り返し荒い息を吐いてごまかしてはいるが焼け石に水だった。
か細く小さな手を握りしめないように、縋るように撫でる。
耳を打つのは健やかな寝息とオレの手が立てるくちくちと言う水音ばかり。
「は っ、やば 収まんないっ」
ビチっとまた精液が飛び出して床を打つも、オレの手の中の愚息は力を漲らせたままだ。
床に溜まる白濁の液を見下ろして泣き出したい気持ちになりながら、頼りない手の中の熱に祈るようにしてすり寄る。
ともだちにシェアしよう!