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雪虫4 15
わずかな……とは言え、雪虫にしてみたら濃いフェロモンの匂いとひやりとした体温、それから生きているのだと証明する呼吸の音に跪きたい気分だった。
ごそごそとした気配で意識が浮上する。
一瞬、雪虫の香りに包まれた場所にいることが理解できずにうろたえていると、視界の端に銀に近い金糸の髪が揺れるのが見えた。
「雪虫?」
「しずる! おはよう」
傍らでにこにこと微笑む雪虫にはっと胸が詰まる。
研究所で保護されている雪虫と、研究所に泊まることのできないオレとじゃこうやって寝起きに顔を合わすなんてことが絶対になくて、一日の初めに番の顔を見るのはこれが初めてだった。
シーツに頬をつけて、髪をもつれさせながらにこにことしている姿に泣きそうになりながら「おはよう」と返す。
「先に起きたなら、起こしてくれればよかったのに」
いつから雪虫が起きていたのかわからないけれど、オレが傍にいるのに寂しい思いをさせてしまったんだと思うとへこむ。
「しずるのねがお、みてた。んふふ、かわいかった!」
「かわ っかっこいいじゃなくて?」
「 ?」
雪虫はどこに差があるのかわからないようできょとんと首を傾げてくる。
「雪虫は、可愛い。オレは、かっこいい!」
「かっこいい!」
そう言ってもらえると嬉しくて、はにかみながら体を起こした。
普段は感じないようなねっとりとした倦怠感が下半身に絡みついていて、いつものように動くことは難しそうだ。
「体は? どこかおかしいところない?」
オレでこれだけの気怠さを感じおるのだから、雪虫の体へのダメージはどれほどのものかと問いかけると、やはりこれにもきょとんと首を傾げて答えてくれた。
「ちょっと お腹の中、に、しずるがのこってるみたい?」
もじ とお腹を押さえながら言われると、その可愛らしさにぐっと鼻を押さえる。
「痛いところは? 熱があったりとか……」
「へいき!」
勢いよく返される言葉は雪虫にしては力強くて、オレが見る限りは生命力に溢れているようだ。
とにかくっ! オレの第一は雪虫なんだから雪虫が無理をしないって前提ではあるんだけど、それを踏まえた上でー……この元気さならもう一回くらいはいいんじゃないかなってもぞりと尻を動かす。
そんなオレのスケベな考えが筒抜けていたのか、雪虫にぱっと小さな四角いものを突き出されて微笑まれてしまった。
雪虫が自らゴムをスタンバイしてくれていたことに、感動したんだ。
いや、興奮じゃない。
感動っ!
なんとか血の止まった鼻を擦りつつ、雪虫がオレの息子スティックにそろりと触れるのを見守る。
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