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雪虫4 22

 いつもの様子から比べて……だから、それでもおとなしいことには変わりないかもしれなかったけれど。 「回数は?」 「……」  むぅと唇をひん曲げてみるも、そう言う約束だ。  雪虫との情事を知られたくないと思っても今のオレにはそれを止める手立てもなければ、嫌と言う力もない。 「雪虫は二回、オレは……合計でいいですか?」 「一日毎がいいな」 「ええと  」  記憶を頼りに自分で出した回数を数えて……改めてΩの匂いにあてられたαの絶倫具合にぞっとする。  もしこれに雪虫を付き合わせていたとしたら、今頃熱が出てた では済まなかっただろう。 「あの……あの……アルファの抑制剤ってもっと強いのありませんか?」 「あれより強いの?」  ちょっと眉を上げるようにして問いかけてくる瀬能は、オレの顔を見てからさっと爪先まで視線を移動させてから「袖を捲って」と言ってきた。 「君ね、先に言いなさいよ」  そう言うと棚に収めてある救急箱を取り出して、手を伸ばしてくる。 「大したことないからいいかなって思ったんですけど……」  ちょっと叱られた気分になりながら袖を捲って両手を差し出す。  そこにあるのは発情期の最中に自分でつけた歯形が並んでいて……でも、以前につけたもののように深くはなかったから放っておいたものだった。 「あー。もう塞がってるかなぁ」  そう言いつつも瀬能は手早く消毒してガーゼとネットを被せてくる。 「ま、君はアルファだし、いらなかったかな」 「だからそう言ったじゃないですか」  つーんと唇を尖らして言い返すと、瀬能は苦笑を隠しもしないで肩をすくめた。 「君ね、人の心配を無下にするものじゃないよー」 「無下にはしてないですよ」  むしろありがたいと思わなければならないのは重々承知だ。  親がいないに等しい、学歴のない子供を雇って面倒見て、気にかけてくれる存在って言うのが貴重って言うのはわかる……が、それと素直になれるかは別問題で。  可能なら雪虫との性事情は教えたくない。 「そう? んじゃ続きを聞いてもいいかな」  にこにこと言う瀬能に、「そう言うとこですよ」と呻くような声で返した。  あの発情期の日の後、雪虫はたいして寝込むことがなくてオレはほっと胸を撫で下ろす。  いつもならばちょっと空気が冷たかっただけでも熱を出すことがあったから、今回も熱を出して長く起き上がれないんじゃないかって心配をしていた。    ここでセキがいれば一緒によかったねーとか言い合えたんだろうけど、残念ながらまだ帰ってきてはいない。  瀬能にもどこに行っているのか聞いてみたこともあったけれど、気づけば全然違う話をしていて……ごまかされたんだとわかった。

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