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雪虫4 23

 すべてを話し終えて……これが医者相手だから話せるんだよな と微妙な気持ちのまま肩を落とす。 「とりあえず、今回が初めてのことだし、次回についても同じように過ごせるといいね。反省点は自分でもわかっているんだろう?」 「はい、シーツの替えをもっと余裕をもって用意しておきたいですし、食事も内容の見直しができたらと思ってます。オレはゆっくり食べてられないのでもう少し手軽で栄養価のあるものがあればいいなと。あとはー……」 「ああ、避妊具は? どうだった?」 「痒がったりすることはなかったです」 「サイズは?」  んぐっと言葉に詰まるけれど、絞り出すように「ちょうどです」と言った言葉に「へぇ~」と返されて……  この聞き取りがオレだけで済んでいることに感謝するべきだろう。  雪虫にこんなこと聞いてたらぐーで殴っているところだ。 「僕の方でも気にかけておくけど、何事にも百パーセントと言うことはないけれど、もし『おや?』と思うことがあったら少しでも早く相談するようにね」 「……わかってます」  気まずい話に体を揺するけれど、これがどれだけ大事な話なのかは分かっているから避けるわけにはいかない。 「バース性の特性に生殖行動があるだけに、君らの行為を止めるのは逆効果だろうしね」 「う……」  バース性が と言うよりはΩ性が繁殖のための性別と言われているのを思い出して、むかむかとするような嫌悪感に顔をしかめた。  性別なんて自分ではどうしようもないものでマイナスのレッテルを貼られ、特性とまで言われてしまうと侮辱されている気分だ。  それが馴れによるつい出てしまった言葉だとしても、いい気はしなかった。  顔に出てしまったのか瀬能は微苦笑を浮かべて「すまないね」と謝ってくる。 「いえ……」 「何はともあれ、今日と明日は休んじゃっていいよ」 「えっ……優しい」 「僕はいつも優しいでしょ?」  その言葉に曖昧に笑って返すと、思いっきり苦そうな顔が返された。  つまりオレの生活って言うのは、畑仕事と雪虫の世話と瀬能と大神の仕事で構成されているわけで……その内の二つがなくなると途端に何をしていいのかわからなくなる。  いや、勉強すればいいんだろうけど、瀬能がたまにはゆっくり休むようにと念を押すものだから、なんだかそれも違うような気がしてしまっていた。  だから、雪虫が睡眠をとっている間は……ホントに何をしたらいいのやら…… 「あれか、趣味を持ってない定年退職後のお父さんって奴か」  ぼんやりする場所は公園じゃなくて研究所の中庭だけどもさ。

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