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雪虫4 33
同情してるも違うだろうし、憐れむはもっと違う。
言葉にするなら……
「……うたが忘れられない」
「…………」
言い終えてはっとなった。
「話」って単語を入れ忘れていたことに気づいて、さぁっと血の気が下がっていくのを感じる。
「ちちちちちちちっちがっうたが話してくれたことが、頭から離れなくて!」
飛び上がって言い訳をするオレを、雪虫は寝転がりながらきょとんと見上げている。
静謐さを持つ冬の青い空色の瞳は……
「ごっごごごっごっごめっごめんなさっ……」
「しずる?」
「うわっ浮気とかじゃないからっ!」
「雪虫しってる! かいしょーってセキは言ってた」
あいつっ!!! なんてことをっ!
「や、違う、違うくて、うたに相談されたことで……ショックを受けちゃって」
「ショック?」
そう言って首をこてんと倒す姿はあどけないと言うか、世の中の怖いことも汚いことも何も知らないとでも言う様子だった。
雪虫のその姿に安堵して、オレが飛び上がったせいで乱れた金糸の髪をそっと整えながら、見下ろした体のどこにも傷がないことに改めてほっとした。
この体に傷がついていたならば、きっと雪虫は今まで生きてはいられなかっただろう。
男Ωの持つ妊娠に関わる機関を取るような大掛かりなことをされてしまったならば、雪虫はもうそこで死んでしまっていただろうから……
雪虫が再び捕まったら、うたと同じことをされる可能性があるのだと言うことに、指先からどんどんと血の気が引いていく。
「雪虫、オレ……っ絶対に守るからな!」
「しずるは雪虫が守るね!」
はきはきっと返すと、雪虫はぶるりと体を震わせて身を縮込めてしまう。
「あっ寒いよな」
そう言って慌てて抱き締め直すしてやると、雪虫はこちらに体重を任せてふぅと安堵の息を吐く。
全身でオレに体を預けて、それに癒されているんだと嬉しそうな顔をされて……雪虫にはっきりとした返事を返していなかったことに気が付いた。
「友達のうたが困ってたから、助けたいと思ったんだ」
オレの言いたいことをまとめた一言はひどくシンプルだ。
「誰が友達よ!」って感じのことは言われないだろうけれど、他人って距離じゃないしこれでいいんだと思う。
正確にはオレの番の友達だし、ともだ……親友? の友達ってくらいの立ち位置だとは思うんだけど、これだけやり取りしてて知人ですって言うのはオレ自身が薄情すぎる。
男ならぱっとダチだって言っちゃうんだけど、うたは女の子だし。
差別やなんや言われるかもだけれど、それでも男女って言う性差はバース性と同じくらい大きな壁だと思う。
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