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雪虫4 36
いーって歯を見せるような笑顔になると、雪虫もそれをまねていーっと声を出す。
それをインカメラで撮って……
小さな画面にオレと雪虫の笑顔がこぼれんばかりに映っている。
「わ わぁぁぁぁ!」
「また現像して持ってくるから」
「もっと! もっと撮る!」
ねだられるままにシャッターを押し続けて……今日一日でオレの写真フォルダが爆発的に増えたのは、嬉しい出来事だった。
スカスカとした感覚のせいでぶるりと体が震えた。
それは寒さのせいじゃなくて、シャツが一枚足りないために感じる肌寒さのせいだ。
もう研究所を出ないといけないと言うオレの服を掴んで離さない雪虫に負けて、仕方なく着ている服を一枚置いて帰ることになった。
二、三枚の服を着まわしているオレにとってそれは困っちゃうことだけど雪虫の可愛さを考えたら全然オッケーなことで、でも困ったなーでも番のおねだりだしなー困ったなーあー困った困った、程度に困っている。
「オレの服を着た雪虫可愛かったな」
思い出しただけでむふ っと顔が崩れそうになるから、慌てて気を引き締める。
とは言え、今日のことで雪虫が写真を撮ることに興味を持ってくれたのだからー……
「は、ハメ 撮り とかっっ」
できたりなんかしちゃったりしたら、もうそれは家宝じゃなくて世界遺産でもいい。
もちろん、そんなのをついうっかり他の人に見られたら……って、オレの冷静な部分が警鐘を鳴らすから撮らないけれど、もしそう言うのがあればオレのソロプレイは充実するんだろうなって思いはある。
「今日はお帰りですか?」
「あ。はい、もう特別期間じゃないんで」
受付のおじさんに声をかけられて、照れながらそう返す。
この研究所で働いている人達は、Ωのことについてはよくよくレクチャーを受けているから、オレがここにどう言った理由で泊まっていたのかを察してはいるはずだ。でもそれをおくびにも出さずににこにこと送り出してくれるから、気はずさは少しマシだった。
その目の奥に、雪虫とのあれやこれやを詮索するような色を見つけたら、オレは怒り出すかもしれない。
他人の想像の上だとしても、雪虫の裸体を他の人間にさらす気は一切ないのだから。
「そうだ。門のところに一人、男が立っているのでお気をつけてください」
「は?」
不審者かと思うも、そうだったならばとっくに警察にドナドナされているはずだ。
不思議に思いながら門をくぐって、男が立っていると言われていた方に視線を向けた……のを後悔した。
公園のベンチにとりあえず連れてきたけれど、どこかお茶でも飲める店にでも入るべきだったのかもしれない と、隣で身を縮めるようにして座る……御厨を盗み見た。
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