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雪虫4 38
ぺこり と頭を下げつつも、正直自分がどうして頭を下げているのか解せない。けれど、それで目の前の御厨に心の平穏が訪れてくれるなら、まぁ……いいだろう。
「そ……か……ごめんね。そんな状況なのにいきなり自分みたいなのが出てきたらびっくりするよね……でも、みなちゃん、突然金とメモだけ残して消えちゃったから……心の整理ができなくてつい」
「あ、それは最低ですね」
思わずポロリと出た言葉に、しまったと口を押さえる。
「そんっそんなことない! それに、みなちゃんはっ……最低なんて言われるような人じゃないよ! みなちゃんは何年も諦めずに君を探してたんだよ⁉ そんな情の深い人がそんなことをするんだからきっと事情があったはずなんだ!」
「う……子供を探していたことは……聞いています」
感情を込めて必死に言い返す御厨は、突然別れを切り出されたとしてもみなわへの思いは全然陰っていないように思えた。
入院の連絡を受けて飛んでくるくらいなのだから二人の関係はそんな安っぽいものではないんだろうってことは、御厨に子供のことを話しているって部分でも証明済みだし、パートナーがいるってオレに話していることでもわかっている。
それなのに、別れを告げたのは……仙内の手伝いをしたらただでは済まないってわかっていたからだ。
大神の情報を入手して、それを漏洩、それから雪虫を攫う際に加担して……やくざ……じゃなかった、やくざじゃないやくざっぽい何かにそこまでして、何もありませんってことは絶対にない。
なんだったら、自分だけでなく恋人だって被害を受ける可能性もあるはずで……
みなわは御厨を守るために別れを切り出したんだろう。
嫌いになったんじゃなくて、好きな相手にまでとばっちりが行かないようにって。
「……あー……それで、御厨さんは会えないとわかっててどうしてあそこに?」
「それ、は 」
理解していても、それでもわずかの希望にかけて縋りついていたのをわかっていて尋ねるオレは性格が悪いんだろうか?
仕方がなかったとは言えみなわを研究所に縛り付ける一因になってしまったことに対して、居心地の悪い思いを感じるのはオレがまだそう言った世界に染まり切っていない証拠でもあるのだけれど、どうにもシクシクと胸が痛む。
「て 手紙、だったら届けられる かもしれない、けど?」
もちろん検閲があるから、内容によっては渡せないし……要注意人物ってことで記録を残されちゃうかもだけど。
でも……目の縁に雫を溜めながら俯く姿を見ると、どうにも落ち着かなくなってしまう。
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