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雪虫4 46

   オレは勢いと言うかなんと言うか、もう雪虫だけを噛むっ! て決めていたからそのことに対して悩みはなかったけれど、雪虫はもしかしたらオレに噛まれることを悩んだり不安に思ったりしたんだろうか?    雪虫はあんなに小さくて華奢なのに、時々びっくりするくらい包み込むような抱擁感みたいなものがあって、雪虫にすべて許されて包み込まれているような気分になることがある。  だから、項を噛んだこともそんなふうに、雪虫が許してくれただけじゃないのかとふと思ってしまった。   「しずる? ケガした?」  念のために長袖を着ていたと言うのに、雪虫はどこを見てその怪我に気がついたのだろうか。  御厨が倒れ込んだ時にとっさに差し出した手の傷を指摘されて、しぶしぶ長袖の袖をめくった。  深い傷でも大きい傷でもない。    消毒することすらためらうような擦り傷ではあったが、怪我は確かに怪我だった。 「いたい?」 「いや……ちょっとピリピリはするけど、それくらいかな?」  本当はなんともないと返したかったけれどじっと見つめる青い目に、わずかな嘘ですら吐くことができない。    雪虫はオレの腕についた傷に対してまるで自分のことのように顔をしかめて痛そうに、覗き込み……それからすんすんと小さく鼻を鳴らす様子をみせる。  それはバース性の人間がフェロモンを嗅ぎ取るにする行動で…… 「…………オメガの匂いがする」  そのことに俺は飛び上がりそうになると同時に、雪虫が他のΩの匂いを嗅ぎ分けたことにびっくりした。  Ωとしての性質の弱い雪虫はあまり他のΩ達を気にする様子がなかったからだ。  かろうじてオレのフェロモンは良い匂いとは言ってくれるが、フェロモンに対しての反応はせいぜいそれぐらいしかしなかった。  その雪虫が、鼻を鳴らした後に少し顔をしかめてみせたと言うことに、ちょっとオレの胸のどっかがきゅんって音を立てる。  これは、初嫉妬⁉   「……」 「セキが、大神がオメガの匂いをつけて浮気してかえってくるって前にいってた」 「あぅ⁉」 「浮気した?」 「してないっ!」  何を言うのかと思ったらよりにもよってそこ⁉  オレの雪虫への愛を疑われたのもショックだったけれど、雪虫の口から浮気と言う言葉が出たことが一番ショックで……そんな要らない知識を入手して欲しくなかったと思うのは、オレが雪虫を神聖視しすぎているからなのかもしれない。  でも、初めて降り積もった新雪の雪原のような雪虫にはそのままでいて欲しい なんて思いもあって、セキ達から俗な知識を得てくることにちょっと抵抗を感じてしまう。  

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