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雪虫4 50

 これが大神ならばしれっと言って終わりにしそうなものだけれども、オレはそこまで開き直ることはできなくて……瀬能に何を聞かれるのかを覚悟しながらぎゅっと手を握った。  汗ばんだ皮膚を擦り合わせるせいか、ぎゅぎゅっと音がしそうだ。 「避妊、してる?」  しれっと返ってきた言葉はオレの予想とは違ったもので、いっそからかってくれたらもう少し気が楽だったのにと唇を尖らせる。 「避妊……と言うか、まずそこまでできてないです」 「挿入に至ってるかどうかじゃなくて、精液のついた手で触れてないかどうかだよ」 「そ れ は  ……」  挿れてはないけどオレ自身に触れた手で雪虫のソコに触れた。  先走りにも精子が含まれているならオレのしたそれは…… 「あ、の……気を付けます」  オレのしたことが安易だったのは理解するけれど、だからと言ってそれで雪虫に子供ができる可能性はどれほどなんだろうと考えると、なんとなく臍を曲げたくなるような気分になる。  そんな内心を見透かしたのか、瀬能は意味ありげにちょいっと片眉を上げて睨んできた。   「君達の年で我慢しろって言うのは酷だとはわかっているからやめろとは言えないけれど、わずかでも可能性はなくしておこうってことだよ」 「はい……」 「負担があるのは雪虫だからね」 「わ、わかってます」  わかってはいるんだ……けど、アノ状態からアレを我慢しろと言うのも難しいと言うか、回避したくないと言うか……とは言え、雪虫のためと言われてしまうならば我慢するしかない。  項垂れながら両手を太ももに挟んでぎゅっと体を小さくする。 「君、何か趣味でも持ったら?」 「いや、趣味ならいっぱい持ってますけど?」 「例えば?」 「例えば……料理とか? 最近は野菜作りとか、釣りとか?」 「そう言う雪虫に関係しない趣味の話だよ」  改めて瀬能にそう言われて……唸りながら考えて、やっと一つ見つける。 「あ! 筋トレ! 筋トレ趣味ですよ!」 「いや、それも雪虫関係じゃないか」 「どちらかって言うと、水谷さん関係なんだけど……」  今のオレの生活基盤を考えると、雪虫に関係しないことを見つける方が至難の業だ。  それだけオレの生活の中心は雪虫だし、オレもそれでいいと思っている。  でも、瀬能が言いたいのはそう言うことじゃないんだろう。 「君を連れてきた僕が言うのもアレなんだけど、この研究所以外の人間関係を作るべきじゃないかな?」 「そんなこと言われても……」  オレの以前通っていた学校の友人とはもうずいぶんと連絡をとっていないし、トラブルと言うか家庭の事情で学校を辞めた俺と連絡を取りたがる友人もいないだろう。  

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