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雪虫4 53
あれか?
実は蜜月的なアレか⁉
仕事とか言いながら、それをそっちのけにしてて帰ってくる予定を過ぎてるとか⁉
別にオレが大神のスケジュールをどうこう言う必要はないし、二人の行動に口出しする立場にないのはわかってるけど、どこにも行けない雪虫がいるのにそう言うことをされるとなんだかいらぁっとしてしまう。
「早く帰ってきてくれるといいよね」
引き結んだ口元を擦りながら紡がれた言葉は瀬能にしては覇気がないように思えて、その言葉は何かに縋るように思える。
それを見ていると、オレのさっきまでの推測は外れていて、何か危険なことをしているのかもしれない可能性があるのだと気づいた。
「……セキ は、大丈夫なんですよね?」
どうしてそんなことを口に出したかはわからなかったけれど、ふとその言葉が口をついて出る。
なんとなく出た言葉だったのに、瀬能はぱちりと目を瞬かせて……
「心配してるのかい?」
と、人をなんだと思っているんだって言うような発言をしてきた。
「なんですかそれ! オレだって友達の心配はします!」
「だよねぇ」
「それに雪虫と一番仲がいいのもセキじゃないですか? だから……」
「ああー……やっぱそこに戻っちゃう?」
瀬能は残念そうに肩を竦めてみせた。
「あっ! え……」
「ってわけで、ちょっと遠出してもらおうかな」
「っ⁉」
「東条君と一緒に現地に行ってもらえる? 泊まりになるだろうから着替えもあった方がいいけど……まぁ、現地で調達してもいいよね」
はは! と軽快に笑われて、思わず椅子を蹴る勢いで立ち上がる。
「ちょ っそれって、帰りがいつになるかわからないって話ですか⁉」
「いやいや、ちょちょっと終わらせればいいだけの話だから」
「ちょちょっと終わらなかったら長引くってことでしょう⁉」
「ははははは」
くっそ腹の立つ笑い方に机をひっくり返してやりたくなったが、オレは瀬能に雇われているんだってことを思い出して辛うじて踏みとどまった。
新幹線のプラットホームで落ち合った東条はスーツ姿がよく似合っているからサラリーマンのように見えるが、オレは同じようにスーツを着ていてもぎくしゃくして見えて勤め人と言う風ではない。
七五三とは思いたくないが、せめて成人式くらいには見えてたらいいな……
「お待たせしました、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
東条は大神関係で知り合った人だ。
もちろん大神関係と言ってもその筋の人じゃなくて、『野良』を探す方の関係者で見た目は普通の人だった。
いや、普通の感覚がおかしくなっているのかもしれない。
東条はαらしい外見で、こうやって人目の多いところにいるといろいろな視線を集めてしまうようなかっこいい人だ。
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