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雪虫4 61

「でも、寂しがるじゃないですか」 「そう言う時もあるけれど、相手は自立した人間だからね」  書類を片づけながら東条はおかしそうに笑ってくる。 「オメガは発情があって生き辛かったりもするけれど、一人の人間として生きていけるんだよ。私達アルファが手を出さなくとも、したたかに生きていけるオメガもいる。庇護欲を掻き立てる外見のせいで過剰に守らなきゃ、自分が盾にならなきゃ、囲わなきゃ、すべてを肩代わりしなきゃって思いがちだけどそうじゃない」 「だ  」 「寂しいと思うのは誰だって思うよ。それはオメガ特有の感情じゃなくて、君も私も感じることだし赤ん坊も老人も思う。君はオメガを守らなくては何もできないと思い込んでいるんじゃない? 彼らは個の人格と力強さを持った人なんだよ、自分の考えを持ち、自分で選び取っていける強さは彼らにもある」  返事に詰まったのはオレの生活の中心が雪虫にあるからだ。  雪虫の生活のすべてにオレの手の入らない事柄はないと言い切れるぐらいで……  だって、そうしないと体の弱い雪虫はあっと言う間に衰弱してしまう。 「君の番が特別なのは知ってるよ、あの子を連れ出す時にはすいぶん骨を折ったから」 「はい、そうです……雪虫は体が弱いから、だから、だから……」 「だからじゃなくて、だけど、がいいかな」  何が「だけど」なのか理解ができず、かなり大げさに表情を崩してしまっていたんだと思う。 「だけど、自分の考えを持つ一個人だ」 「……」 「番である以上、譲り合いは大事だろうけれどあの子にもあの子の考え方があって目指すもの、選び取っていくものがあるんだってことを忘れちゃいけない。番だから、だから君がすべてを考える必要はないんだよ」 「別に……そんなつもりは……」 「必要じゃないな、するべきじゃない」  もっと厳しい言葉に言い換えて、東条はまっすぐにオレを見る。  居心地悪く思うのは真正面に見据えられているからなのか、それともやすりのような言葉だと感じてしまっているからだろうか。 「生活面ではサポートがいるのかもしれない、でも内面はどうかな?」 「……」  深めに切った爪を見下ろして、答えられないまま東条の視線に耐えるように身を縮める。  雪虫に抱きしめられると、許されているように感じることをふと思い出し、あれはオレの暴走を受け止めてくれているからなんじゃないかって思うと落ち着かない。 「あの子はなかなか強情なところもあるだろう?」 「芯が強いんです!」  他所のαに雪虫のことを語られたくないと、反射的に飛びつく。

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