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雪虫4 74

 オレからの不審な電話に、とっさに瀬能は同じアパートに住んでいる水谷に連絡を入れてくれたわけだ……てか、同じアパート暮らしだったんか…… 「いきなり連絡があってびっくりしたよぉ」 「すみません、てっきり黒服の誰かが来てくれるものだとばかり思ってたので」  大神が何かの際に使っている黒いスーツの人々のことを思い出す。  いかにも な感じの彼らは、普段は大神や直江の指示でいろんなことをしているようだった。 「僕が行ってもあれだしね、水谷くんが居てくれて本当によかったよ。とは言え……」 「……」  瀬能の切れた言葉の続きは、仙内が突然現れたことに対してだろう。  水谷が飛び込んでくる直前に消えたけれど……仙内が向かった方にある窓ガラスは鍵がかかったまま傷一つなく、人が侵入したわずかな痕跡すら残ってはいなかった。  どうやって入り込んだのかもわからなければ、どうやって姿を消したのかもわからない。  なまじお化けと呼ばれているだけに、本当にそうなんじゃないかと思えてしまう。 「あいつは……何をしに来たんでしょうか?」  あのわずかなやり取りの間に、わざわざオレの部屋に来てまでしたかった何かがあるとは思えない。 「君の話だと、君に危害を加えようとしていたわけではないだろうし」  まさか本当に感動の親子の再会のために来た……と言うわけでもないんだろう。 「……そんなことより、オレはあいつが雪虫に何かするんじゃないかってことの方が心配です。雪虫がモスナートに帰るって」 「…………」  オレの言葉に瀬能はかすかな反応を見せたけれどそれだけだった。  いつものようにモスナートについて話をしてくれることも、そこから派生した話をすることもなく難しそうな顔をして押し黙っている。 「モスナートって、モスナート教?」  きょとんと返す水谷に、オレはうんとも違うとも言えずに曖昧な表情を返すしかない。  モスナートと聞けば宗教だと答えが返る程度には有名なそれは、少なくともバース性のことを学ぶ人間にとっては苦い感情を抱いてしまうことでも有名な名前だった。  Ωシェルターの同時襲撃事件。  オレが産まれる随分前の話だったが、モスナートの司祭の一人が先導して行った史上類を見ないほどのΩの銃殺事件だ。  運命の番を隠された としてその司祭が行ったそれは、結局保護されていたΩ達のほぼすべてが犠牲になると言う惨劇で幕を閉じ……どう言うわけだかΩの社会的地位を格段に下げたきっかけでもあった。 「モスナート……教、なんでしょうか? でも物言い的にちょっと違う気がしてて……」

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