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落ち穂拾い的な 嫉妬1
世界が広がると言うことはいいことだ。
特に雪虫は大神によって軟禁に近い生活を送っていて、関わる人間と言えば瀬能と大神と直江とセキとうたくらいのものなんだから。
だから研究所に移って、セキ達に連れられて他のΩ達と交流を持ち始めた時は確かに「いいことだ」と感じた。
感じたんだ。
だけど、世界が広がるって言うことは、オレ以外の奴らも雪虫の可愛さを知ってしまうって言うことで……
柔らかい髪は金色に近い銀糸のように光り輝いているし、冬を湛えたような蒼い瞳は神秘的な光を放っていて、肌はきめが細かくて透けるように白いのに唇と頬だけは花が咲いたように赤いから、もうっ! 本当に! 奇跡かっ! ってくらい雪虫は可愛い綺麗。
完璧なんだ。
そんな雪虫だから、世界が広がればよこしまな考えの奴が近くに寄ってくることもあるだろうから、非常に心配で心配で心配で……
セキやうたに警戒するように頼んでいるけれど、話に花が咲くと結構きわどい話題なんかも出るみたいで、ちょっとやきもきしてしまう。
「君ね、不審者でつまみ出されるよ?」
食堂の入り口にへばりつくようにしているオレの背後からのんびりとした声がかけられて……
「あ、瀬能先生、ぉはざまっーす!」
「おはようじゃなくてさぁ」
「あっちょっ しーっ!」
わっと話が盛り上がったらしく、雪虫の笑い声も聞こえてくる。
ぐぐっと身を乗り出して耳をそばだてるも人数が多いせいか雪虫が何を言っているのかはっきりとは聞き取れない。
「いやだから、不審者だってば」
「しーって」
うるさい瀬能をしっしって追い払って、さらに身を乗り出す。
「だーかーらー! 最終的には既成事実! 既成事実だよ!」
セキの馬鹿らしいまでの大声に……どうしてだかその場にいるΩ達は神妙に頷いている。
雪虫だけが一人、きょとんと一拍してからこくこくと頷いていたので内容をいまいち理解していないのかもしれなかったけれど、それでも覚えて欲しくない言葉だ。
「そうすれば大神さんは逃げられないっ!」
天に拳を突き上げて叫ぶ姿は、天下覇道も思いのままとでも言わんばかりの力強さを感じる。
「オメガこわい……」
ぶるりと身を震わせて、柱にしがみつく手に力を込める
「あ!」
小さく上がった声は雪虫のもので、思わずもう一度身を乗り出す。
「しずるもきせーじじつ大事だって言ってた! ゴム? にあなあけろって言ってた!」
どっと汗が吹き出てかつて自分が何の気なしで言った言葉に飛び上がった。
そんなつもりじゃなくただ乗りその場のノリで口走ったセリフだっただけに、雪虫からその言葉を聞くとやってしまった感があって罪悪感に打ちひしがれる。
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