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落ち穂拾い的な 嫉妬2

 Ω達の間にざわりと衝撃が走ったようで、雪虫は自分の口をぱっと押さえておどおどとセキにしがみついている。 「番がそう言ったの⁉︎」 「え……うん」 「そう言えば! 番いるんだよね⁉︎」 「うん!」 「それって、いつ子供出来てもいいってこと⁉」 「う、うん?」  一気にまくし立てるような言葉にうんうんとしか言葉を返せなかった様子だが、雪虫はひどく興奮しているようでほっぺたをピンクにして……控えめに言い過ぎてもかわいい。  俺の番、最高じゃないのか⁉︎ 「じゃあ、番になるってどうやって決断したの?」 「?」  その場にいるのはセキも含めて未だに番を持っていないΩ達のようで、唯一首筋に噛み痕があるのは雪虫だけだった。  ぎらっとした視線に一瞬怯んだようだったが、雪虫は身振り手振りで何とか皆の質問に答えようと頑張っているようだ、けれど雪虫自身の語彙力ではあの日の出来事を説明しきれなかったようで、周りにはいまいち伝わらないようで…… 「んー……ヒートになったから、星のおしろでかんだの」  精一杯の説明は、周りのΩ達に伝わったのか伝わってないのか…… 「星の?」 「お城?」  再びざわ と騒ぎが起こり…… 「それって県道のとこにあるラブホ?」 「あ、確かにあそこは星と城がモチーフだったよね?」 「え……それって、ヒート事故でラブホに連れ込まれて噛まれたってこと?」 「それはこんな小さな子に無理やり⁉」  ────⁉  なんだ⁉ 県道のラブホって⁉ 「ち ちが  」  事故ってなんだ⁉  無理やりってなんでだ⁉   「そりゃちょっとは事故っぽかったけどそんなんじゃなくてオレと雪虫は運命の相手で以前から番になるって言っててそんななし崩し……だけどなし崩しじゃなくてちゃんと思いが通じ合ってのことだから本当にちょ、ちょ、ちょ、セキっセキっ誤解とけ! 解いてくれ!」  ぎぎぎ って音がするくらい柱を握りしめて電波を送るも、セキはオレの思いを受信してはくれなさそうだ。  こちらを振り返ってニチャァって笑う姿は…… 「あー……アレは誤解を解く気はなさそうだよ?」 「えええっちょ……このままじゃ、オレ最低野郎じゃないですか⁉」 「最低野郎の前に不審者なんだってば。あ、こっちです」  そう言うと瀬能は後方に声をかける。  なんだ? って思いながら振り返ろうとしたオレの脇にさっと手が伸びて、両腕を掴まれて…… 「へっ⁉」 「だから、君は不審者だって苦情が入ってるんだよ」 「ええええええ⁉」 「セキ君から」 「はぁー⁉」    警備員にずるずると引きずられていくオレを、セキは悪い顔で見送っていた。 END.  

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