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赫の千夜一夜 5
ぽつん とセキはそう言って手の中にあるピルケースを開くと、ごぽりと真っ赤な血……ではなく、抑制剤の表面が溶け込んだ真っ赤な液体が溢れ出して地面をぼたぼたと打った。
「ど どうしましょう……オレ、もうヒートが来 」
「あ、あ゛ー……」
「声が出るようになってきたか」
リンゴを剥く作業をしながら大神は尋ねる。
「ず、 すこ、じ?」
「水は飲んだか?」
そう尋ねながら、大神は飲みかけのミネラルウォーターのペットボトルをセキに手渡す。
「の で、な 」
「飲むように言っておいただろう?」
「ねて っ、 」
布団から出てきた時の寝ぼけ眼を見るに、寝ていたんだろうと大神は溜息を吐いた。
元々薬が効きにくい体質とは言え、抑制剤が一切ない状態で迎えた発情期をセキが無事に乗り越えられたことに安堵はあった。
ごくごく と喉の鳴る音がして、「あ、あー」と確認する声が後を追いかける。
「でもっ飲むなら大神さんのが飲みたかったです!」
「あ?」
喋りだせるようになったと思ったら突然何を言うんだか……と大神が眉間に皺を寄せた。
「あ! でも、ナカにも欲しかったです! いつもみたいにナカを大神さんの精液でいっぱいにして、ぐちゃぐちゃになりすぎて弛んだ雑魚オスま〇こからあっついザーメン溢れさせて幸せだなってなりた っぃて!」
ピシリと額を弾かれ、セキは妄想から現実に引き戻されて不満そうだ。
「信用のない薬を飲ませる気はない」
瀬能の出してきたものならいざ知らず、海外の街角で入手した物にどんな副作用があるかなんて分からないそんな物を大神は安易に飲ませる気はなかった。
故に避妊は絶対で……幸い、ここではコンドームのサイズに困ることはない。
「じゃあ やっぱりゴックンしたかったです!」
戻ってしまった話を前に、眉間を押さえて大神は呻くように顔をしかめる。
セキの視線を辿って使用済みのコンドームの入ったゴミ箱を見つけると、さっとベッド下へと蹴り込んでしまう。
「それなら……今からでも、ちゅーちゅーしていいですか? 大神さんのでっかい改造チン〇ンいっぱい舐めていっぱいしゃぶって、オレの口の むぐっ」
「ほら、リンゴだ、黙って食え」
セキの要望通り、ウサギ型に切ったリンゴを口に突っ込んでやるとモゴモゴと不満そうな表情でそれを咀嚼する。
日本の物よりも幾分酸味があったが、それでも発情期でさんざん体力を使った体には染み込むように優しい。
自分の発情期に付き合って大神もくたくたなはずなのに……と思い、セキはそっとその背中に頭を預ける。
散々縋りついた背中はそんなことじゃびくともしないくらいがっしりとしていて、もう少しだけ体重を預けてシャツの間から覗く小鬼をそろりと見上げた。
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