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赫の千夜一夜 45

 大神はセキの甘ったるい完熟した果物のような香りの奥に慣れ親しんだ、けれどいつまでたっても馴染まない異国の香りを見つけてさっと辺りを探る。  小さな小さな香炉は足元に吊るしてあった。  半透明に透ける美しい石で作られたそれは、実用としてしまうにはもったいないほどの彫刻を施されてはいたが……  大神は、流れるようにか細い煙を出すそれを掴んで紐を引きちぎると、ベッド周りを囲んでいた紗のカーテンを開け放ってベッドサイドに置かれていた水差しの中に躊躇なくそれを放り込んだ。  水に沈んでいく氷翡翠は透明感を増して更に美しく見え、今にも溶けていきそうだった。  けれど大神はそんなことを気にもしないまま、ベッド周りの紗をすべて取り払って窓を開け放つ。  砂漠が見えているのに流れ込んでくる空気の冷たさはどこかに冷房器具でもあるのかと思わせるほど、冷たくひやりとしていて火照った肌に気持ちよかった。 「ぁ゛、あ゛ー……」  ぐちゅ と一際大きな水音がして、ベッドの上のセキの体が大きく震える。 「おい」  空気の流れを留めていたカーテンを取り払ったと言うのに、セキから溢れ出すフェロモンが濃すぎるせいか寝台の上はいまだにとろりとした雰囲気に包まれている。  大神が駆け寄ってみるも、セキは達したためか虚ろに虚空を見上げてうっすらと口を開いたままだ。 「セキ! 何をした⁉」 「んっ ん゛ん゛っ」  肩を掴んだ拍子にセキの体が跳ね、ぴゅく と可愛らしく起立した先端から白濁の液が零れ落ちる。 「ぅ、  んっ大神さんの手ぇ、きもちくて……しゃせ した」  恥じらいながら言うセキに、大神は厳しい顔を向けてもう一度「何をした」と強めに問いかけた。 「……ぁ、オレ……ご褒美欲しくて…………クイシュ マしゃんが、媚薬が入ってる香炉があるきゃらよかったらって……」  未だ小さく体を震わせているセキは、そう言うとちらりと大神を見る。 「匂い……嗅いだら、大神さんが使ってるのとおんなじだったから……」  少し戻ってきた呂律でそう言うと、達したばかりだと言うのに衰えを見せない股間が恥ずかしくなったのか、両手でさっと押えて隠す。 「こんなところでなんて馬鹿なことをしてるんだ」 「疑似……はつじょーセックス、したくてぇ……」  そう言うとセキはもじもじと体を揺すりながら大神へと倒れ掛かる。  華奢な体が、いつもではありえないほどの熱を持って……まるで本当の発情期のような様子だ。 「終わったばっかりだろう」  溜息まじりで言いながら大神はセキを膝に乗せて体勢を整えるために背中に幾つもの枕を詰め込む。  

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