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落ち穂拾い的な 決闘の秘密

「君が行ったduelo de silento、いかさまだったって知ってたかい?」 「……いえ」  帰りの飛行機の中、ワインを片手に瀬能は王室の図書館でコピーを取った資料にご機嫌な様子で大神に切り出した。 「まぁそれでも負けちゃったみたいだけど」  はは と笑う姿は、他国とは言え王に対する敬うべき感情が欠落しているように見える。 「あれ、あのアルコールの強い酒、本来は一本を二人で分け合って飲むべきものなんだよ」  大神はそう言われて、あの甘ったるくて……なのに内臓が灼けそうなほど強い酒精を持った酒のことを思い出してうんざりとした表情を見せた。 「それはそうでしょう。さすがに頭が痛かった」 「それで済むのが君だよねぇ、強いねぇ」 「……しかし、あんなのを飲んで勝負になるんですか」  まともに立って歩くことすら危うかったのだ、duelo de silentoの戦いの場まで行きつけるかどうかすら危うい者だっていただろう。 「ならないよーん」  ワインをくぃっと飲み干し、ご機嫌に瀬能は言う。 「なぜならduelo de silentoは戦うための決闘ではないから」 「またトンチですか?」 「いやいや、まずあの酒を飲み切れる人間が多くないと言うことさ、途中で潰れてしまう人もいると聞くよ」  まず試合にならないのだと理解する。 「もし飲み干せてリングまで行けたとして、まぁヘロヘロだよね」 「……ええ」  自分もそうでしたからとは言いたくなくて、大神は素知らぬ顔で頷く。 「そんな状態でまともな殴り合いなんかできなくて、自滅したりあっさり途中で倒れたりして勝敗が決まるようになっているんだ」 「は……?」 「酒を飲んで、飲めたとしてもフラフラで、フラフラだけど戦ったとして、戦えずに潰れていく……貴重なアルファを死なせないための決闘なんだよ」  duelo de silentoの秘密を暴露し、瀬能はご機嫌でワインを注いでごくりと飲み干す。 「そんなべろんべろんの人間がどうなるかわかる?」 「……」 「リバースだよ」  至極真面目な顔で答えた後、わはははは! と大きな笑い声をあげる。  顔色には出てはいなかったけれど、よくよく観察してみれば耳が普段よりわずかに赤いので酔っているのだろう。 「王族も、挑戦者も、最終的に吐いて決闘になんかなりはしない。そんな体裁の悪いことを外に聞かせられないからduelo de silento、つまり秘密の決闘なんだ」  大神は瀬能の言葉に目を瞠ったが、そんなことに自分がまきこまれていたのかと思い返すと、重い溜息を抱いた。  END.  

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