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落ち穂拾い的な それでも

「 ────っ」  安静にするようにと侍医に言いつけられた体が悲鳴を上げ、うまくバランスが取れなかったために手はハジメに届かないままに空を切る。  はっとした瞬間にはもう遅く、アルノリトはなんの受け身も取れないままに寝台から転げ落ち……けれども、それでも這うようにしてハジメに手を伸ばす。 「ハジメ! ハジメっ!」  踵を返そうとしていたハジメだったが、自分を呼ぶアルノリトの声に足を止め、そしてわずかに肩を震わせる。 「半年で別れるなら愛しているなんて言うなよ」  抱き起こすこともせず、床に伏したアルノリトをまっすぐに見つめて言う言葉にはやはり感情は乗っておらず…… 「愛しているとも!」 「嘘つきっ!」 「sunonとmonatoの二柱の神に誓って! 私は君を愛し抜く!」 「だっ だったらなんであかを   っ」  溢れ出したハジメの感情に、アルノリトの喉がひくりと引き攣る。  幸運を招くΩなのだと説明をしていなかったことに、アルノリトははっと目を瞠った。  そして先ほどの愛人でも側室でもないと言ってしまえば、こんな体になってまで求めるのだから伴侶として望んでいるのだと思われることにも、今になってやっと気づく。  この国では幸運のΩはおとぎ話にも出てくるような存在だ、けれどそれを他国のハジメが知っているかは……と、アルノリトはさっと顔を青くした。 「私は伴侶は君しかいらない! 彼を求めたのは君の出産のためだ!」  ぐっと漏れ出した感情を飲み込むような気配がする。 「俺が……子供を無事に産めないかもしれないから?」 「なん  」  本来、王の伴侶はΩで、Ωは子を産む存在だ。  けれどハジメは幾ら調べてもβでしかなく……その体は男Ωの体よりも出産には向いていないだろうことは医者でなくてもわかることだった。  今は問題なく育っている胎の子が、明日にはどうなるかわからない。  少なくともバース医である瀬能ですら前例を知らないと言うのだから、何が起こるかわからない出産に輪をかけて不安要素が増え続けるのは否めない。  周りはもちろんではあるが、そのことを一番に感じているのは母体であるハジメだろう。  だから、アルノリトはその不安を拭い去るために……   「子供と君を天秤に乗せるなら、私は君しか選ばない」  大事なのはハジメだと訴えたはずだったのに、その言葉を聞いたハジメは酷くショックを受けた表情のまま拳を作って固まってしまった。 「ハジメ?」  よたよたと立ち上がり、俯くハジメを覗き込むように身をかがめる。 「……じゃあ、子供はあかに産ませるんだな?」 「は……?」  どん と胸に拳が振り下ろされるまで、アルノリトはわけがわからないとぽかんをした表情を浮かべていた。

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