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落ち穂拾い的な それでも

「俺がっ……産めな 「産める!」  ハジメの言葉をかき消すように叫んでさっと体を抱きしめる。  腕の中の体は……一時よりやつれたように思えて、アルノリトは整った顔を歪めて腕に力を込めた。  つわりで食事がとれないから痩せた と言ってはいたが、それだけが問題と言うわけではないだろう。  アルノリトは自分が思っている以上に、この妊娠出産に対してハジメがナーバスになっているのだとこの時になってやっと本当に理解した。  探し求めた運命が傍らにいて、その胎の中に我が子がいるのだと……そのことだけで浮足立ち、ただただ幸せだけがあるのだと感じていた自分が恥ずかしく思え、アルノリトは逃げるように鼻先をハジメの髪に埋める。   「私は、この子が産まれてくる以外の未来は考えていないよ」  抱き締めすぎたせいで子供が苦しがってやしないかと、アルノリトはわずかに腕の力を緩めた。  ほっとしたのは子供だけではなかったようで、ハジメ口から溜息のような息が漏れる。 「duelo de silentoの際にも言ったが、ハジメ以外の番はいらないし、あのオメガをそう言った目的で留めておきたかったわけではない」  アルノリトはハジメのつむじにちゅっと口づけ、こめかみにも同じように唇を落とす。  頬や瞼にも同じように触れ、目じりに滲んだ涙を拭うように最後にそこにキスをする。 「ハジメ以外の人間は見わけもつかない」 「ふ……それはさすがに、言いすぎだろ」  舐められた端から溢れてくる涙を拭われながら、震える声で返す。  精いっぱい震えを堪えて言ったはずの言葉だったが、アルノリトは声の端にそれをくみ取ったらしい。 「私の先走った行動がハジメを不安にさせてしまったのだね」  上手く動かない腕を動かして寝台へとハジメを促すと、すっぽりと包み込むようにして腕の中へ収める。  そうするとまるで鳥かごのようだったけれど、それが妙に落ち着くのだと知ってハジメはそろりと胸にすり寄った。  嗅ぎ慣れない薬の臭いが鼻をつき、アルノリトが大神に決闘を申し込んだ理由を知りたいと口に出す。 「どうして、あかを……」  望んだ と言うと語弊があるし、迎えようとした と言うのも誤解を招きそうだと思い、ハジメはそこで言葉を区切る。   「理由は二つだ。一つは、君が知っている人間を傍に置いてやりたかった。クイスマ達がいると言っても同郷の者とは違うだろう? だがアルファもベータも無性の人間も君の傍に近づけたくない。……ハジメの知り合いでオメガは彼だけだったろう?」 「……ああ」 「故郷の話もできるだろう? そうすれば君の気分も少しは晴れるだろう」

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