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落ち穂拾い的な 給料は

「あのぅ……」  セキの珍しく潜めた声に、直江は何事かと手を止めた。  大神が会食の間に直江とセキは簡単なものを車の中でささっと食べるのが常だった。今回もいつもと同じように直江が買ってきた弁当を食べている最中で…… 「どうした?」 「オレの給料ってどうなってるんです?」  ふと思い出しただけで、それ以外の思惑なんてない。  以前、ハジメに言われたことをそう言えば……と口に出しただけのことだった。  今着ているスーツも支給されたもので、今食べているものも直江が買ってきてくれて……セキは今日も一日、一度も財布を出さなかったと気づく。 「うん?」 「あ……いや、あの、これのお金とか  」 「弁当一つじゃ足りなかった? おにぎりでも買ってこようか?」 「十分なんですけど……オレ、一度も代金を渡さなかったなって」 「会社から出てるからね」  いまさら何を……と言う直江の感情が手に取るようにわかり、セキはそうだよなぁとぼやきながら弁当をつつく。  朝は大神と食べるから用意されているし、昼と夜はこうしてお弁当が渡されたり、直江に連れられて食事に行ったりで……寝るところは大神と一緒に行動して一緒のベッドに寝ているから住処なんてものはないし、もともと物欲がないから何か欲しいと思うこともない。  お使いに出た際のお釣りをもらえたりするから、しずる達と買い食いする分には困らない……  ゆえにセキは「自分の金」がなくても生活できてしまっていた。 「君の給料は、新しい戸籍を用意した時に作って渡してあった口座に入ってるだろう?」 「はぇ?」 「給料やオメガ手当とか、お金関係はすべてそこに振り込まれているよ」  そう言われて、『セキ』の名前に決まった時にそんな話が出たような出てないような……と思考を巡らす。 「ネットからでも確認できるけど、一度記帳しておいた方がいいよ? 繰り越しとかになったら面倒だから」 「え……えーっと  」  ここで直江に給料は幾らもらっているのかとか聞くことは簡単だったけれど、それは自分が給料をもらっているのかすら把握していなかったのだとバレると言うことで……  まず、通帳がどこにあるか……から始めないといけないと言うことが言い出せず、セキは曖昧に笑って頷く。 「あ、給料の引き上げだった?」 「えっ⁉」  幾らもらっているかも知らないのに、少ないも何もない。  セキは慌てて手を振るけれど、直江は気にしていない様子だ。 「それなら普通に言うよりも、ベッドの中でおねだりした方が効果的だと思うな。寝起きだと大神さんは寝ぼけてすぐに頷いてくれそうだしね」  素晴らしくいい笑顔を返す直江だったが、セキはやはり給料を知らないとは言い出せないままであった。 END.

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