229 / 329

落ち穂拾い的な 三人のΩ

 緩やかに目覚めを促すような光にそっと目を開くと空がある。  とは言えそれは画家の描いたもので本物じゃない。  広い寝台の天井一面に描かれた空と鳥の絵は、幾度見ても細密に描かれていて感嘆すべきものだ。 「クイスマ? 起きた?」  シモンの声に気怠い体の向きをごろりと返ると、生まれたままの姿のシモンが窺うように首を傾げている。    紗のカーテンで囲われた寝台の上は、そこだけで世界が完結してしまいそうな完璧さと同時に閉塞感もあり、クイスマは体を起こしながらカーテンをひっかくようにわずかに開けた。  流れ込んでくる清浄な空気が未だに漂っていた発情期のフェロモンを押し流すようで、ほっと息を吐く。 「ん、おはよう、カイは?」 「何か食べたいって」  なるほど……とクイスマは喉を擦る。  この三日間、飲まず食わずで絡み合っていたのだから腹も空くし喉も乾く。 「シモンは何かお腹に入れた?」 「うぅん。クイスマを待ってた」  そう言って蕩けるように笑うと、すす と傍に来て幼い子供のような態度で頭を預けてくる。  クイスマの金色とはまた違うくすんだ色合いの金髪がさらりと肌の上を滑っていく。今朝方まで続いた発情期のためにクイスマの肌はまだ敏感で、柔らかな癖毛の感触に小さく身を捩った。  子猫が甘えてくるようにすり寄ってくるシモンに押し倒されるようにして倒れ込むと、そのままぎゅうと抱き着いてくる。  散々絡まり合った後だから恥ずかしがる必要もないだろうに、はっきりとした頭でこうやっているとクイスマはどことなく気恥ずかしさが湧く。 「あ? お前らまだ終わってないのか?」  指先の砂糖を舐めとりながら紗のカーテンを避けて戻ってきたカイが、寝台の転がる二人と見て呆れたような声を上げた。  やはり二人と同じで一糸まとわないままの姿でもそもそと寝台に上がってくると、抱き合う二人の隙間を埋めるように体を横たえる。  シモンとは違う少しひんやりとした体を抱きしめて、クイスマは柔らかな唇に舌を這わす。 「ん、甘い」  唇に残った砂糖の粒はほんの少しだと言うのに、くたくたに疲れた体には染みるように強く感じる。  つい、もっと欲しくなって舌で追いかけるようにして咥内を追いかけると、シモンがむずがるようにして注意を引く。 「僕は?」  むぅー……とちょっと拗ねた様子を見ながらクイスマとカイの間に割り込み、仲間外れは嫌だとばかりに二人の唇の間に割り込む。  三人の唇と舌が絡まるようにちゅる ちゅぱ と粘ついた水音を立て続ける。  もう何年もこうやって三人で発情期を乗り越えて来たからか、そのキスは深くなることなく軽く息を乱れさせただけで終わった。

ともだちにシェアしよう!