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ケダモノの聖餐 3

 もっともらしいことを言ってはいるが、新世代反社会解体法を抜けて今刑務所の外にいる幹部と言うのは、その法が制定された際にこそこそと逃げ回った者だけだった。  大神は冷たい視線だけを遣り、やはり興味なさげだ。 「ほ、ほら! 大神さんはオメガに御執心じゃないですか! 俺のところのルートにもオメガ用のがあってですね! これが近年儲けに   ひぃ」  冷たい刃が押し付けられたのに感じたのは熱だった。  男は大げさに声を上げ、得意そうに大神に話していた言葉も途切れさせてしまう。 「レヴィ」 「……ごめんよ」  しゅん となった姿は飼い主に怒られた犬のようで、主従関係をはっきり表している。  男はほっとした表情をして、大神に更に言い募る。 「い、いい話だと思いませんか⁉ 俺達は近年オメガの可能性って奴に気を向けてましてですね、こらぁでっかいのが一山きそうなんです。ここでそれを返して見逃してくれるなら……いかがです? 大神さんも一枚噛みませんか?」  男の言葉は聞こえていたはずなのに、大神は面倒そうに煙草を咥えただけだ。  傍の女……すがるがどこからか出したライターで火をつけると、さっと煙の臭いが広がる。 「オメガのね、アレは本当に捨てるところなんてどこもありませんよ! 鑑賞しても良し、犯しても良し、産ませても、   内臓だって、移植に使えば他の人間使うよりも拒絶反応が出ないんですよ! すごいじゃないですか! これからはダメになった内臓をオメガで補う世界が来るんですよ! オメガ研究は今こそ躍動するんです! オメガの可能性を一緒に見ましょう! 究極のオメガを作り出すんです!」    朗々とした演説が終わると部屋は沈黙に落ちる。  男ははっと自分の置かれた状況を思い出し、大神の手にあるカードに視線を遣って再び返してもらえませんかと猫なで声を出した。   「つまんなーい」    沈黙を破ったのはレヴィで、ナイフを持つ手にぐっと力を込め始める。 「そそそそ、そんな研究に関われるのはこれから大きなアドバンテージになりますし   」 「きょうみなーい」  レヴィはそう言うと更に力を込めていく。 「や  やめ    」 「もう飽きたよ」 「お おがみさ  止めてください……この、二人は……」  明らかに人と異なる雰囲気を二人に、男は話を反らすように尋ねる。 「一体何    」  食い込みすぎたのかナイフを伝って赤い血がぷくりと溢れ、先端へ伝っていって球を結び……落ち  ────けれど、雫は落ちずに掻き消える。 「この二人は、お前らが見たがっているオメガの可能性の対極にいるものだ」    ふぅ と紫煙を吐ききり、大神は嫌悪感を隠せないままに立ち上がった。  部屋が狭苦しく思えるほどの巨躯に男は震え出すも、大神は街灯の傍を歩くかのようにその傍を通り過ぎる。  

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