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この恋は不幸でしかない 9
体の中から聞こえてくる聞いたこともないような軋む音と、体内に感じたことのない他人の熱と。
嵐のように体中をめちゃくちゃにしてくるそれに、暴力だ と叫びそうになるのに、零れ落ちるのはナカを擦られて感じる気持ちよさに蕩けた声だ。
「あぅ ん、ンっ!」
「ああほら、じっとして。これで全部 」
入る の言葉と同時にどっと内臓を揺さぶられ、反射的に体が逃げを打つ。
懸命に逃げ出そうとして手を伸ばしたのに、大きな手がそれを覆うようにして引き戻しに来る。
穂垂の上に君臨するのは、それだけ大きく力強く、有無を言わせない力を持ったαだ。
「 あ゛っ」
腹の中の敏感な箇所が灼熱の杭で抉られる。
その度に穂垂の立ち上がりからこぷりと液体が零れていく。
裂かんばかりの力で引っ張られた服が引っかかる体を抱え込み、東条ははぁと穂垂の耳元で息を吐いた。
「貴方のナカ、ぬるぬるしていてとても気持ちいいですよ」
「っ そ、れは、 」
ほぼ面識のないような男にいきなり襲われて、それでも感じていると言われているようで、穂垂は苦し気に首を振る。
そんなわけがない! いい加減にしてくれ! と怒鳴ったはずなのに、口をついて出てのは「ぼくも きもちぃ です」と舌足らずな言葉で紡いだ答えだった。
わけがわからないのに、体が喜んできゅうっと東条を締め付けたのがわかる。
ぽたりと涎が落ちた廊下は、昼間は子供たちが駆けまわっていた場所だ。
なのに今、自分はそこにカウパーをあふれさせた性器を擦り付けて喘ぎ声をあげている……気が狂いそうになる状況なのに、煮え滾る頭の中は東条のフェロモンに包まれてこれ以上ないくらいに悦んでしまっている。
「匂いも、どんどん甘くなって……」
再びはぁと吐かれた息は深い感嘆を含んでいるようだった。
「ひ ぃンっ におい 嗅がないで 」
耳元で感じる呼吸の音は、体中をぞわぞわと総毛立てさせる。
そうすると自分の目いっぱい広がった部分が嬉しそうに東条の熱を食む。
東条のゆさりゆさりと揺する振動に、内臓すべてがかき回される。
「ヒートの匂いを嗅ぐなと言うのは、無茶でしょう?」
「んっ ン! ヒートじゃ……っまだっ、ぼく、まだ 」
毎日の抑制剤も欠かしていない、予定日が近くなれば念のためにと頓服も服用していた。
だから、遅れることはあってもこんな急に発情期に入ることなどありえなくて……
「────ああ、本当に甘い」
東条の唇が項を這う。
「 っ! やっ嫌だ!」
とっさに両手で首を覆った。
まるで冷水を浴びせかけられたかのように頭が冷え、理性を磨り潰していた熱が一瞬で押し流される。
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