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この恋は不幸でしかない 11

 それが、Ωを受精させるための体の変化だと…… 「 だ、め  っ」  汗で滑る手を伸ばしても体はまったく逃げてはくれない。 「 ──── あ 」  とぷり と落ちた雫に内臓が揺さぶられたのを感じた。  熱い東条の体温よりも更に熱く、触れた箇所を焼けただれさせるのではないかと思わせるとろみが吐き出される。  嫌悪を感じて然るべきなのに…… 「ぁ、あ……きもち、い  」  腹の中にとくとくと吐き出される精液の温もりが、堪らなく心地よい。  自分を覆うようにしがみつき、腰を震わせながら射精の快感に呻き声をあげているαの重みが嬉しい。  わずかな隙間も許さず、自分のモノだと主張するような行動が……  穂垂は意識の外で、勝手に感極まって泣きだしそうになった。  突然襲われ、力ずくで奪われ……無遠慮に体内を汚されていると言うのに、弾けるように喜びの感情がせり上がって…… 「気持ちいい? 私もだよ」  射精の快感に微かに上ずる声が耳元で告げる感想に、穂垂はどうしてこんなにも胸が震えるのかわからないまま反射的にこくりこくりと首を縦に振り返した。  大きく体がゆさりと揺れ、穂垂はそこでやっと自分が意識を手放してしまっていたことを理解した。 「あ   」  枯れた声に反応して、東条の顔がこちらを向いた。 「場所を移動することにしよう」 「あ  」  なぜ どうして の意味を持つ言葉を出そうとしたのに、出たのは掠れた小さな音だ。  けれど東条はそれをくみ取ったのか、さっと視線を動かし……穂垂もそれに倣うように視線を動かす。  その先には廊下に貼り出してあった園児の描いた絵が皺を刻んで転がり、どちらのモノともしれない体液が辺りを汚していた。 「ぁ゛っ あ゛  っ!」  何がそこで起こったのかをありありと伝える惨状に、穂垂は東条の腕の中から飛び出すように手を伸ばす。   「 や 、これ、 そう じ  」 「っ  片づけは呼んでいます」 「ら め、……だ、だめ、たけおみ く も  いる  」  ジタバタと駄々っ子のように暴れ出した穂垂の体を、東条の腕が強い力で抑え込む。 「こんな時に、他の男の名前を出す?」 「ゃ、なに  」 「ヒートが本格的に来る前に移動するのが最優先だ」  引きちぎられた折り紙で作られた飾りも、園児の描いた絵やたけおみにも……穂垂が懸命に手を伸ばそうとしても、手が届くことはなかった。  穂垂は喉が焼かれるような飢えだと感じた。  東条がくれる口づけを貪り、お互いの絡め合った唾液を飲み干してやっとわずかに潤う、そんな飢餓感に苛まれる。  だから、求める。  だから、欲しがる。  思考を焼き尽くす熱に抗えず、求めるだけ求めて果て、それでも欲しくなって求めてしまう。

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