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この恋は不幸でしかない 13

 東条の手はやんわりとしているがそれでも穂垂に有無を言わせないだけの力強さがある。 「っ⁉ あ……たけおみくんは……そんな、  今、どこに⁉」 「たけおみは妻のところに。あ、いや、今は保育園かな」  東条は時計を確認してから言い直すと、遮光カーテンを閉めてからベッドへ腰かけた。  広い空間なのに、すぐ傍に座られて穂垂はぐっと喉が詰まるような気分になり、喉を擦ろうとした手を震わせる。 「……僕……っ」  一気に血の気が下がったせいか眩暈で視界がぶれた。  氷のように冷たくなってしまった指先で首の皮膚を探るように伝っていくと、引っ張られたせいかぴりっとした痛みが走る。  はっと跳ねた心臓が今にも転がり落ちていきそうな錯覚に震えながら、指先を進めていくと行き止まりに辿り着く。  立ちはだかったものに邪魔されて項に触れることができない。 「手当はしてある。しばらく痛むだろうが、治りは早いだろう」 「て あて  」 「胃にものを入れたら鎮痛剤を飲むといい」  小さく悲鳴を飲み込むような音と共に、穂垂の指が痙攣したように跳ねた。  項に貼られた大きなガーゼを引っ搔くようにむしり取ると、真っ白な布地に規則正しく並んだ赤いシミがついている。  大きさは……大人の口のサイズだ。 「  ぁ」  まるでスタンプでも押したかのように、規則正しく並ぶ点でできた輪が幾つも並ぶ。 「ぼく……ぼく、は  」  空気に触れた傷口がぴりぴりと痛みを訴える。  繰り返し繰り返し噛まれたために傷だらけの項に…… 「取ってしまったか。貼り直そう、こちらにおいで」  自分の心とは正反対のところにあるような笑みを浮かべて、東条は穂垂へと手を差し伸べる。  穂垂は途切れ途切れの記憶の中で、 大きな手の熱さと力強さがどれだけ有無を言わせずに自分を押し倒したかを思い出し、衝動のままに腕で払って後ずさった。    とは言え、体はまともに言うことを聞いてくれず、よろけるようにベッドへと倒れ込んだだけだった。 「ゃ……っ触らないで! と 東条さん……っ、あ、貴方、僕に……」  発情期の煮えた脳味噌に鮮烈に残された快感と、それを連れてくるために東条が乱暴に襲い掛かった恐怖と……それらを思い出し、穂垂は震えに抗えずにシーツを掴んで岩のように体に力を込めた。    ────とろり  腹部に力が入った瞬間、自分の意識の外でごぷりと粘っこい音が体内に響く。  それと同時に熱いモノが尻の隙間を伝って溢れ出し……  ひんやりとした軌跡を残しながら次々と白濁の液が溢れ出す。

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