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この恋は不幸でしかない 16
ガクガクと達した快感に震え続ける手が掻きむしるように首の傷に触れ、ひぃひぃと声にならない嗚咽を上げた。
綺麗に腹筋の浮いた東条の腹の上にぷしゃりと飛び散った粗相に、穂垂は紅潮した顔を更に赤くしてぶるぶると体を震わせる。
「っ ぅ、っ 」
「恥ずかしがることはないだろう?」
「穂垂」とわざと低く呟かれて、その度に穂垂の体が応えるように潮を吹く。
「っ、ひっ ぅ、っ ぅ 」
「泣くようなことじゃない、穂垂」
「っ! ゃ、やぁっ っ」
絶頂する快感に強張る体を無理矢理ひねって逃げようとするのを抑え込み、東条は再び「穂垂」と低く囁く。
「 ────っ!」
「逃げる必要はない」
あやすように口づけられ、穂垂はぐずぐずと泣きながら東条へとすり寄る。
小さな子供のようにほとりほとりと涙を流しながら、「こわい こわい」と譫言のように呟いてはしがみつく腕に力を込めていく。
その姿は、まるで欲しいものから離れまいとする子供のようだった。
ちゃぷりと耳元で音が響き、穂垂の意識はゆっくりと覚醒する。
体中がこれ以上ないほど怠くそして同時に痛みがあったが、労わるような手でゆっくりとマッサージをされて呻き声を上げることはなかった。
「んぅ……」
「おはよう、穂垂」
「っ⁉」
耳元で名前を呼ばれて、反射的に飛び上がろうとしたが敵わない。
派手に水しぶきを上げただけの行動は、東条の腕に抑え込まれてそれ以上何も起こらなかった。
「 っ!」
広い湯舟と、温かな湯と……そして自分がまるでぬいぐるみのように東条に抱きかかえられていることを知った穂垂は、息が止まりそうなほどの衝撃を受けて何も考えられない状態だ。
なぜ自分が風呂に入れられているのか。
なぜ東条が甲斐甲斐しく入浴介助をしているのか。
自分に襲い掛かった男が、どうしてこんなことを……
「ひっ 」
もがいて距離を取ろうとしても、東条の腕の力は緩まない。
水面を叩く音と悲鳴のような呼吸音とがないまぜになり、湯船の中でわんわんと不協和音を上げる。
「と じょ さ……っいやっ! 放して! 放してください!」
縁に指先が引っかかり、爪がかつりと音を立てたところで東条は諦めたのか溜息と共にそろりと穂垂の体から手を離す。
息を詰めるようにして、パニックになった穂垂が転ぶんじゃないかと見守り……そしてドアまでたどり着いた姿を見てほっと胸を撫で下ろしてみせる。
「あけ、 あ、開け 」
壊れんばかりの勢いで扉にしがみつく穂垂は、東条が魔法でも使って閉じ込めているかのように「開けて」と繰り返し訴え続ける。
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