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この恋は不幸でしかない 33

「君が食べなければ破棄するだけだから」 「あ……では、いただきます」  湯気の立つコーヒーを勧められて、穂垂は困った表情でそろりとそれに口をつける。 「……っ」  ぎゅっと眉間に皺を寄せそうになったのを堪え、二口目を飲み下す。 「……突然押しかけて、ご迷惑をおかけしてしまったのに。ありがとうございます」  目の前のエッグベネディクトに手を出そうか迷い、これも食べなければ捨てられてしまうのだと考えてナイフとフォークを取り上げた。  たっぷりのオランデーズソースに怯みそうになりながらも、一口ぱくりと頬張る。 「美味しい、です」  ぎこちなく言い、真正面に座って自分を見ている東条から逃げたくて逃げたくてしかたのない気持ちを表に出さないように努める……が。 「居心地悪い?」 「あ、いえ、……東条さんも食べないのかなって」 「ああ、じゃあ私も貰おうかな」  そう言うと優雅な手つきでエッグベネディクトを食べ始める。 「今日は休みだったろう? この後、必要なものを買いに行こうか」 「必要……?」 「間に合わせに集めさせたものばかりだから、気に入らないものもあるだろう?」  指先がくるりと円を描く。  その動きがリビングだけでなく、この家全体のことを言っているのだと気づいて穂垂は慌てて首を振った。 「いえっ、僕はっ……あの人の好みに合わせたいので、彼と行きます」  穂垂はソースの下から流れ出してきたとろりとした黄身をナイフでつつくようにしてから、照れくさそうに視線を外して笑う。  その笑顔の違和感に……東条は一瞬眉間に皺を寄せそうになる。 「彼?」 「はい! せっかくこうして番になれたし、こうやって部屋も用意してくださったんだから……あ! もしかして全部の手続きは東条さんが代行なさったんですか⁉」  慌てて言うと、穂垂は「お手数をおかけしちゃって!」とぺこりと頭を下げた。  東条は、この奇妙さに…… 「貴方の番は?」 「え? 彼です!」  ぱぁっと頬を朱色に染め、満面の笑みではっきりと言い切る姿は、好感の持てる爽やかなものだった。  けれど、その目は番である東条を見ていない。 「…………」 「やっと番になれて、こうして一緒に暮らすって……嬉しいのもありますけど、恥ずかしいですね。東条さんはあの人の面倒をよく見てくださっていたんですよね! 今度からは僕がサポートしますから、引継ぎ……じゃ、堅苦しい? えっと、知っておいた方がいいこととか、教えていただけたら嬉しいです」  照れくさそうに言い、穂垂は満足そうにエッグベネディクトを口へ運ぶ。 「……貴方のお名前は?」 「え? あ、な、何かの面接ですか?」  

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