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この恋は不幸でしかない 40
「 わん、まんま くだちゃ、ぃ、わん」
ふるる と体を震わせて怯えながらも訴えるかなともを、東条は思わず彼女から取り上げる。
「ちょ っ何するの⁉」
彼女の前では可能な限りきつい言葉や態度、行動を慎もうと努めていたがこれを見てはそんなことは言っていられない。
見下ろした床に転がっているのは、端が欠けていて捨てなくては と思わせる黄色い小さな皿だ。
わずかに残された食べ物がからからに干からびて端の方にこびりついている……
「その子が、い、犬の真似してっ遊んでるの! 私はちゃんとやめなさいって言ったわよ⁉ でもその子が止めなくてっ」
さっと青ざめたように見える彼女の顔を見つめ返して、東条は腕の中にいるかなともの顔を覗き込む。
大人が突然争いだしたからだろうか? それとももともと日に焼けていないからだろうか? 青い顔をして今にも泣き出しそうな顔をしている。
「かなとも、どうしてここでご飯を食べていたのか教えてくれるか?」
「ま ん ?」
聞き取れない言葉を漏らすと、かなともは痩せすぎているせいか大きく見える目を母親の方へと向ける。
「ちょ……何言ってるのよっあんたが進んで自分から! テーブルの下で っ」
「かなとも。今日はご飯食べたか?」
「食べさせたわよっ! 私が食べさせてないとでも言いたいの⁉ 滅多に来ない貴方と違って私は毎日このこと向き合って世話をしてるの! いつも面倒みないくせいに、来た時にあら捜しするのやめてよ!」
キィ と高音で出された悲鳴のような声に、かなともは慌てて耳を押さえるようにして頭を抱え、東条へとぎゅっと身を寄せて逃げようとした。
その行動は、この叫びの後に何をされるかが理解できるほど繰り返されているのを証明する。
「ご ちゃ めんちゃ……たぁの、や……」
痛いのが嫌だ と訴えるその様子に、東条はさっと血の気が下がる経験をした。
「かなともが……かなともはベータだとしても、私の息子だ」
「そんなこと私が一番わかっているわよ! その子は貴方の子供で、時宝の血を引いてるんだから!」
がなり立てるような言葉に東条は思わず顔をしかめた。
端整な顔が憎しみを込めて歪められると、途端に切れ味の鋭い刃のような印象がして……
「それは、口に出していい事柄だったか?」
「 っごめ、ごめんなさい。で、でも、本当なのよ⁉ その子が自分でそこで食べたいって言ったし、その……っ貴方が考えているようなことはしてないから! だって、その子はご飯よりも動画見ている方が好きだし、謝るのだって口癖なだけだから」
「こんな小さな子の口癖が『ごめんなさい』?」
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