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この恋は不幸でしかない 51

「東条さんには、東条さんのご家族を大事にしていただきたいです。確かに彼は大伯父かもしれないけれど……たけおみくんも寂しがっているはずです」 「……」  東条は食卓に置いたタブレットへ目を遣ると、物思うようにコツコツと指先で天板を叩く。  表情は穏やかだったが、それが表に出ない苛立ちを表しているように見えて、穂垂は膝の上でぎゅっと拳を作った。  常に傍にいる東条もそうだろうが、自分自身もこの生活がずいぶんとストレスなのだ とぶちまけてしまいたいのを唇を引き結んで堪える。  多少つわりが酷かったものの、こんなに早くから休職しなくてはならないというほどではなく、このマンションに越してきてからは彼がいない間は常に東条の監視の目があり……正直に言ってしまえば息苦しい。  外に行くのも東条に報告しなければならなかったし、気晴らしもできなくて窮屈だった。  体を気遣ってくれているのかもしれなかったが、穂垂にはそれが迷惑でしかたがない。   「僕に割く時間をご家族に使ってください」  彼が用意した部屋に、身内とはいえ彼以外のαの匂いがつくことにいらつきを感じるし、穂垂は今のこの状態が自分の精神衛生にいいとは思えなかった。  はっきりと言い切る穂垂に、東条はすぐに返事をせずにじっと見据えるような視線を送る。  優性の強いαらしいきつい視線は、それだけでΩを竦ませるには十分だ。 「  か、感謝、は、しています。本当です、彼との生活をこうして手助けしてくださったことは、本当に、本当にありがたくて……何かお返しができないか、ずっと考えているくらいですし」  そこまで言い、穂垂は慌てて「金銭で返すには限界があるんですけど」と付け加えた。 「お返し……」  それまで黙って聞いていた東条がふと言葉を漏らす。  少し考え込むような素振りを見せて言葉を区切った間を逃さず、穂垂は「できることならなんでもします!」と声を上げる。 「では……子供の  ……いや、止めておこう」 「えっそんな、出来るかどうかは聞いてみないと。子供のって言いましたよね? 僕は保育士ですから  」 「安定期も来ていないのに子供の面倒は無理だ」 「大丈夫です!」 「無理だ」  きっぱりと言い切られ、穂垂はむっと唇を曲げた。 「経験は浅いかもしれませんが、気晴らしにもなりますし」 「…………」 「一度会わせてください!」 「君に、何かあったらどうする」  ぽつり と零された声は沈んでいて、先程言い切った時のような力強さはない。 「何かあったら で話してたら、出かけることもできないじゃないですか」  

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