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落ち穂拾い的な 買い物デート…ではない 1
腕時計を見て、待ち合わせの時間よりも早く着けたことにほっとする。
昔からの友達だからって、時間にルーズなのはよくないってわかってるから、オレは早めについてシュンがやってくるのを待つ。
シュンとは高校からで、もうずいぶんと長い付き合いになる。
お互い気の置けない関係だと思っていると思うし、これだけつるんでいるんだから趣味も気も合うというもの……
「……最近、ちょっとイイ感じだと思ってるんだよね」
オレ……阿川六華としては、そろそろ初恋人の一人も欲しいお年頃。
長年の友達から恋人に なんてよくある話だよね? ね? ね?
こうして休みの日はほとんど一緒に過ごしているんだし、これはちょっと告白してもいい気がする。
もちろん……友人に告白して振られたことのある身としては、ちょっと勇気のいることだけれど。
「 ──── お兄さま?」
雑踏の中にいるのに、すとん と耳まで届いてくるような涼やかな声。
双子の弟はいるけれど、オレを「お兄さま」と呼んでくれるのは幼馴染の妹である礼 ちゃんだけだ。
ふわふわとした妖精のような雰囲気の可愛らしい子で、「さま」づけで呼んでくるものだから呼ばれるたびにくすぐったい思いもしちゃったりする。
「礼ちゃん!」
ぱっと振り返ると目の前に花景色が広がる。
薄紫と水色を基調にしたアジサイ柄の振袖とそれに合うレースの手袋とサマーブーツ、緩やかに波打つ甘栗色の艶やかな髪、そして化粧はしていないとわかるのに華やかな顔立ちは丹精込めて作られた人形のように整っていた。
まるでそこだけぽっかりと、物語の中を見ているかのような気分にさせる装いに、思わずぽかんと口を開ける。
「お久しぶりです。お兄さま」
にこにこと珊瑚色の唇で笑みを作りながら、礼ちゃんはオレを見下ろす……見下ろす……見…………
「礼ちゃんは……」
大きくなったね は女の子に対して誉め言葉じゃないと、慌てて飲みこんだ。
「綺麗になったね」
前回会った時は自分よりも小さくて、ふわふわちまちましていて可愛かったけれど、今はすらりと背が伸びて大人になり切れない少女の危うい感じがしていて、可愛いというよりは綺麗がぴったりだ。
「お兄さまはやっぱり可愛らしいです」
「う゛……ありがと……」
可愛いよりもかっこいいと言われたくて、服装もそれを意識して選んできたっていうのに、礼ちゃんの感想は昔と変わらない。
「礼ちゃんはお出かけ?」
「はい、臨海学校の準備をするために」
高校から行く海への合宿のことだ。
オレ達が行った時はひと騒動あって、ホントにホントに大変だったなぁって記憶しかないけれど、あの出来事があったからシュンと距離を詰めることができたから、オールオッケーだ。
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