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落ち穂拾い的な 暑中お見舞いのお話 6
両手でやっと持てる程度に大きいそれは……
「綺麗な 石……ですね?」
真っ白でつるつるとしているけれど、焚火の火に当たって炎のような揺らめく模様が角度によって見える。
河原で見つかるような丸い形をしているが、表面はそれよりも更に丁寧に磨かれていた。
「真珠だ」
「へ⁉」
そう言われて慌てて見返すも手の中の玉は丸くもなければキラキラともしていない。
よくよく火にかざせば少しはきらめくけれど、女性の首元を飾っているアレとは似ても似つかなかった。
とはいえ、セキ自身は装飾に興味もなければ関わることもなかった身の上だけに、感想らしい感想は出ない。
「えー、なんか知ってるのと違いますね」
ぺちぺちと叩いてみてから振ってみる。
当然ながら音が出ることもないそれは、セキには活用法を見出せないただの塊でしかなかった。
「真珠ならー……入れますか?」
ぐいっと差し出された真珠に、大神は「俺のはシリコンだから」と困惑気味に返す。
「あれ? 改造ちん〇んは真珠じゃないんですか?」
大神は口を開きかけて、はっとしたように首を振る。
懇切丁寧に説明することでもないだろう と、険しい顔のままセキの手の中に収まる真珠を見下ろした。
ころころ と肌の上に真珠を転がされ、大神は迷惑そうにセキの頭を押さえつける。
「遊んでないで寝ろ」
「だってー……もったいないじゃないですか」
大神の胸の上で体を伏せていたセキは、眩しそうにぱちりと目を瞬かせて星空を見上げた。
傍に焚火があるとはいえ明かりらしい明かりが他にないせいか、空には敷き詰めたように星がひしめいている。
隙間を厭うように輝くそれは、街中では決して見ることのできない絶景だ。
繰り返しきらめく星と、繰り返される砂をすり抜けていく波のリズムは気持ちを穏やかにしてくれるけれど、同時にどの瞬間も見過ごしたくないと思わせる。
「大神さんがベッドでも書類を見てないなんて!」
「俺だって寝る時は寝る」
「うーそーだー」
ジタバタと暴れる体を太い腕が抑え込む。
「寝ろ」
「じゃあ、寝る前に運動しませんか?」
セキはそう言うとぶかぶかのシャツの裾を摘まみ上げた。
夜によく映える白い肌がさっと闇を払うようで、大神は眩しいものを見たとばかりに目を細める。
「せっかくの彼シャツ! 青姦! 声出し放題! ですよ!」
大神は力いっぱい叫ぶセキからちらりと目を逸らすと、「いつも出しているだろう」と反論する。
「第一、不衛生だ」
摘まみ上げられたシャツをはたいて落とすと、大神はもう一度セキを寝かしつけようと押さえつけた。
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