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落ち穂拾い的な 暑中お見舞いのお話 8

 原因はダメになってしまった抑制剤にあるとんばかりにセキは困った顔のままするすると大神の肌に手を滑らせていく。  昼間太陽の熱を浴びたからか、心臓を包む大神の肌はいつもよりも熱い。 「熱い……っんぅどうしよ……大神さん、フェロモン押さえ、きれ な  」  滴る汗に絡みつきながら、濃厚なフェロモンが大神に向けて放たれる。  それは、バース性の人間ならば抗い難いほどの官能的なセックスアピールだ。 「っ  ぉい、引っ込めろ」 「ん゛っ……むりっむりです!」  そう叫ぶようにして答えると、セキはそのまま倒れてしまうのではと思わせる勢いで体を逸らした。  一糸も絡んでいない肌は大理石でできた彫像のようだ。けれど首元の色気もなにもない実用本位な首輪だけがセキを人間らしくみせる。  セキは細い体をふらりと揺らしながら立ち上がると、真っ暗な世界に視線を投げた。  空と違って闇の広がるその先は、波音がしなければ地獄へ続いていると言われても納得できてしまう重苦しさがあって……  セキははぁ と大きく息を吐くとそちらへ向けてふらふらとはいずるように動き始める。 「セキ!」 「少し頭とタマ冷やします、そうしたらちょっとマシになるかもですし」  ぐるぐると巡る熱は腹の奥だけじゃなく、脳味噌にまで達して理性を焼き切ろうと画策しているようだった。  それに屈してしまえばいいと思う反面、大神がせっかく自分の為に柔らかな葉を集め、自分のスーツをシーツ代わりにして整えてくれている寝床を汚してしまうのが嫌で……  大神の細やかな心遣いを本能に振り回された発情で汚したくなかった。 「セックスしろといったり、我慢すると言ったり、せわしない奴だな!」  砂を蹴散らしてあっと言う間に追いついた大神は、セキの腕を掴んで引きずり上げる。 「オレ、はぁ……本能でセックス、したいんじゃ、なくって  っ」  大神に引きずり上げられ、抱えられて、セキは観念したように大神の首に手を回す。  そうすると大神の香りが鼻腔を満たして、酩酊したかのようなくらくらとした気持ちよさを連れてくる。 「大神さんと、世界で二人っきりになって、惹かれ合ってえっちがしたい、んです」  ぽこぽこと拳を振り下ろすけれど、それは大神にとっては叩いているのかどうなのかさえわからないほど弱い。 「オメガの抑制剤が切れたから仕方なくセックスするんじゃなくって、大神さんがオレだけを見てくれてるえっちがしたい!」 「何が違う」  いつも通りの硬質な声。  セキの言葉をバッサリと切り捨てるかのようだ。

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