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擦りガラス越しでもぴらぴらと下着が揺れているのがわかるのは、ミントの下着がそれだけ派手な色をしているからだ。
色とりどりの花が揺れているように錯覚してしまいそうになったが、それよりも問題がある。
「おい、毎日洗濯してなかったのか⁉」
「あ、えっと、気持ちはしてました」
ミントが転がり込んできた時にした約束の一つに、下着はそれぞれが洗うっていうのがあった。
その時はまだ、メイドになると飛び込んできたミントがいるのに俺が洗濯までするとは思っていなかったから、そう約束事をした。
ミントに下着まで洗わせるのが申し訳ないという思いからだったが……
「ホントですってば! 心の中では毎日洗濯してたんです!」
「……それは洗濯してるとは言わない」
びっくりして鼻血も引っ込んだようで、鼻に詰めていたティッシュを抜き取る。
「気持ちは大事だってば!」
「気持ちで汚れは落ちない」
どうやったらそんな考えに辿り着くのか……
「どちらにしても、下着が乾いたら実家に行くぞ」
俺の言葉に飛び上がるように、ミントは再び布団へと飛び込む。
そしてそれで抵抗できるんだ とでも言うように、掛け布団で体を包んでしまった。
さっき、その状態で持ち上げられたというのに……わかっていないらしい。
「帰らないですってば! なっんだよ! まこちゃんはオレがいないと生きてけないくせに!」
「今の生活を支えているのは全部俺だけどな」
朝の朝食作りに始まり、弁当の用意もミントの昼飯の用意も、夕飯も掃除も洗濯も生活費を稼いでいるのも俺だ。
「だ、だ、だ、だって、全部まこちゃんが先にやっちゃうから悪いんだろ!」
非難めいた言葉は迫真に迫っていて、そこだけ聞くと本当に俺が悪い気さえしてくる。
不思議なこともあるもんだ と思いながら、再びミントを担ぎ上げようと立ち上がった。
「いつヒートが始まってもおかしくない奴をここに置いておけない」
「ヒートじゃないもん!」
「そんな濃い匂いさせてて、嘘言ったってバレバレなんだよ!」
「嘘じゃないもんっお風呂に入ってないだけだもんっ」
ぷー……と膨らんだ頬を叩き潰したい衝動をぐっと堪えて……
「は?」
「だから、あんま臭いのことは言わないで!」
小さな子供のように舌を出して怒っているという表情をしてみせるが、話はそんな可愛らしいものなんかじゃない。
「はぁぁぁぁ⁉ おまっ 大家のおばあちゃんとこで借りたって言ってただろ⁉」
「あー……二、三回?」
すすす とミントの視線が逃げていく。
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