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0.01の距離 12
それならば、この関係はこれでいいのかもしれない。
「……つーか。ほいほいアルファの腕ン中で寝るなよ」
頭から丸かじりするぞ と脅してみたところですやすやと眠っているミントが返事をするわけもなく……俺はすねたように鼻を鳴らしてまた目を閉じるしかなかった。
大学内の食堂のカフェテラスは今日も利用する生徒でごった返しているが、日差しの入り込む窓際は光がきついせいか不人気だった。
そこに座る佐久間にパックジュースを手渡して、向かい側に腰を下ろす。
「わ! ありがと!」
両手で小動物のようにパックジュースを持って飲み始める佐久間を、あざといとみるべきなのか天然とみるべきなのか……
「いや、こっちこそ助かった」
人づてに渡したために教授が受け取ってくれるか心配だったレポートは、佐久間がとりなしてくれて無事に添削されて手元に戻ってきていた。
あの後佐久間が発情休暇に入ったから、こうやって顔を合わせるのは久しぶりのことだった。
「いいのいいの、大したことじゃないよ」
今にも鼻歌でも歌いそうな佐久間は、前回会った時よりもすっきりとした顔をしている。
Ωにとって発情期がどれほど負担になるものなのかは、兄弟にΩがいるだけによくわかっているつもりだ。
けれどバース性が違う以上、分かり合えない部分もあって……
「なぁ、失礼なことを聞いてるって自覚があって聞くから、怒ってもらっていいんだけど 」
「うん?」
どうしても俺じゃわからないことは、尋ねるしかない。
「ヒートの時って……普通に暮らせるものか?」
俺の問いかけに、佐久間はぷっと吹き出しかけた。
辛うじてジュースは唇の上にとどまったものの、噎せるようにジタバタと体を跳ねさせる。
「す、すま っその、同居している奴が……どうなのかって……」
ミントの風呂に入ってない騒動でうやむやになったけれど、発情期問題はまだ解決していない。
なんの対策もないままというのは落ち着かず、とはいえ俺にできることも限られているからずっと見守ってはいたが……
「ど、どうって……えっ⁉ 信くんって恋人がいるの⁉」
「こい 恋人じゃなくて、なんていうか……家族 の、一部みたいな?」
「?」
佐久間はイマイチわからない って表情をして首を傾げたけれど、きょろきょろと辺りを見回してからそっと口の傍に手を当てて小声で喋り始める。
「あー……えっと、抑制剤の効きにもよるよ。ただ、相手の子、オメガなんだよね?」
「ん」
「幾ら抑制剤が効く体質でも、ヒートの時にアルファが隣に居たらムリかな」
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