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0.01の距離 14
「ちょちょちょ……どういうこと⁉」
「布団がなかったんだからしょうがなかったんだ」
単身者用の小さな部屋はもともと俺一人が住む予定で借りたものだ。
色気も素っ気もない男一人ならば、寝る場所さえあれば事足りた……のに、二人で暮らすことになって、手狭なのは認める。
簡易の小さなベッドマットを敷いてみたりもしたが俺がでかすぎるためかやはり窮屈だし寒いとミントが嘆いて、最終的に落ち着いたのは同じ布団で寝ることだった。
一緒に暮らし始めた時はまだ寒さの厳しい時期だったから、つい暖を取る形がずるずると一緒に寝て……
温もりが必要なくなった今も、なんとなく一緒に寝ている。
「えっ……と、信くんの信さまはお役立ちにならないとかそんな話じゃないよね?」
「現役だよ」
わいわいがやがやとしている場所でなんて話になってしまってるんだ と、落ち着かなげに周りを見渡す。
「そ、それは、……どういうこと?」
頭にクエスチョンマークをたくさんつけていますって顔で佐久間に尋ねられたけれど、俺自身が聞き返したい言葉だった。
いい年したαとΩが毎晩同じ布団で寝て……何もないんだから。
「えっ……⁉ それで何もないの⁉」
「まぁ」
据え膳だとは思ってはいるが、ミントが俺の隣で健やかに寝るのは俺への信頼の証のような気がして、ちょっかいすら出せないままだ。
ちょっと色っぽい方向に持って行けないかと苦心するも、ミントがミントだからそんな雰囲気には一切ならず……
「ごめ よくわかんない」
「俺もよくわからん」
「信くんは、この状況をどうしたいの?」
「俺は 」
ミントが受け入れてくれるなら番になりたい。
でも、俺とのことを諦めているミントの傍にいるのはもやもやする。
「無防備に傍に居られるのは……辛い、かな」
ちょっといい雰囲気だった高校時代を経て二人の関係は進展するかと思いきや、いっそ進みすぎて熟年夫婦な雰囲気まで出てきている今、正直ミントの扱いには困っていた。
「まずはさ、二人の立ち位置をはっきりさせたら? 信くんはさ、その人のことを家族って思ってるんでしょ?」
「ん……小さい時からずっと一緒に暮らしてるからな」
「相手もそう思ってるとして、そこに恋愛感情ってある? 家族の愛情であって、恋人になりたいとかって恋愛感情じゃなくない?」
ざわ と背中が総毛立つ。
「家族の延長に居たいのかもよ?」
「……俺が? あいつが?」
「相手の人を知らないからなんとも言えないよ」
そう言って佐久間は慌てて手を振る。
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