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0.01の距離 17

 学生のアルバイトの稼ぎと、会社を幾つも経営している大人の稼ぎと……比べるものじゃないとわかってはいるけれど、自分がしょぼく感じてしまうのは止められない。   「にしても、これどうしよっかな」  米と肉は何としてでも確保するとして、野菜はさすがに多すぎる。すべて下処理したとしても、保存する場所がないのだからどうしようもない。  幾つかは大家のおばあちゃんに分けるとして、そこも老人の一人暮らしだからこんな量はいらないだろう。 「佐久間にでもやるか」  そうすればいいぐらいの量になるかもしれない と思いながら扉を開けようとして、鍵がかかっているのに気が付いた。 「あ、そうか……ミントがいるなら中に運び込んでるはずだもんな」  留守? でも、ミントは最近やっと鍵をかける習慣が身についてきたところだったから、中にいるかもしれない。  きちんと鍵をかけられるようになってエライ! と思いながら部屋に入ったところで、部屋の中はがらんとしている。  辛うじて布団を片づけることができる押入れがある程度で、他に身を隠せるような場所のない部屋だし、探し回らなければ人の気配を感じ取れないほどの広さもない。 「あれ?」  ミントの一日は、俺に起こされて朝食を食べ、そこから俺が帰るまで一人で携帯電話を弄って過ごしている……はずだ。  基本引きこもりで、俺が連れ出さない限りこの部屋の中でダラダラしているのに…… 「は?」  どうしてミントがいない?  俺が帰れば、狭い部屋の真ん中に寝転がって足をバタバタさせながら携帯電話でゲームに興じている姿が、ない。  当たり前すぎて部屋の一部と化していたというのに、どうして? 「……あいつが出かけるところなんて……」  買い物は面倒くさがっていかないし、せいぜいお菓子をもらいに大家のおばあちゃんのところに行くくらいか?  そもそも、それ以外に行こうにも、ミントはくたびれたジャージかエプロンしか持っていないから、遠出することもできない。  とりあえず荷物を部屋に放り込むと、大家のおばあちゃんが住む隣の家へと駆けだした。  別に、ミントは四六時中注意を払わないといけないような小さな子供ではないんだから、姿が見えないからってここまで慌てて探す必要は本来ならないのだけれど。  視界にミントがいない って言う、人に聞かれたら「バカか⁉」って言われてしまいそうな理由に追い立てられて、俺はミントを探すために息を切らせて走った。  昔ながらの平屋造りの大家のおばあちゃんの家は、実はいつも鍵がかかっていない。    

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