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ほっとした。
「ちびっ子たちからもよろしく頼むって言われてるしさぁ~やっぱ頑張らんとでしょ? ……ですよね?」
「うん?」
ちょくちょく子供から駄菓子をもらっていたのは、防衛の報酬か何かだったのか?
「おま……」
呆れて何も言えないまま、よたよたと部屋に入り込んで冷蔵庫に手をかける。
一応、主人として子供から駄菓子で用事を言いつかるミントに何か言ってやらねば……と思うも、昼間からの緊張感がほどけた反動なのか言葉が見つからない。
のしかかってくるような脱力感に襲われながら、夕飯を用意するために冷蔵庫を開けた。
いつもはがらんとしているそこは、昼間父さんが持ってきてくれたものでいっぱいだ。
「そう言えば、父さんが差し入れしてくれてさ」
「奥様が⁉」
カバンを片づけていたミントがぴょんと跳ねてオレの肩越しに冷蔵庫を覗き込む。
「おおおおおお! お肉っ!」
寝ぐせのついた髪先が頬をくすぐっていくぐらい近くで暴れられて、「暴れるな」って𠮟りつけてぎゅっと抑え込んだ。
体の大きな俺がそうすると、存在感だけは大きいのに体は小さいミントはすっぽりと腕の中に入ってしまう。
出ることができないのに、腕の中から必死に逃げ出そうとする姿は、小さい頃に飼っていたハムスターを思わせる。
小さく、弱く、掌で潰せてしまいそうな存在なのに、存外に力強くたくましい。
ミントはそれとよく似ていると思う。
「びゃっ! な、ナニ⁉ なんっすか信さま⁉ あ! お肉独り占めしようとしてるんでしょ!」
「なんでだよ、独り占めしようとしたって、端から掻っ攫っていくだろうが!」
小さい頃から、幾度ミントにおかずを盗られたかわからない。
特に大好物のウインナー系はすべてミントに食べられたと言っても過言じゃない。
「あれは、信さまがくれたものでしょー?」
「勝手に皿から摘まんでいくのはあげたとは言わないんだよ」
今日貰った中にもウインナーはあったが、きっと明日バイトから帰ってきたら姿を消していることだろう。
せめて一本くらいは食べたいから、今夜食べてしまうか……と伸ばした手を掴まれた。
ぎゅうっと細い指が食い込んで、驚く俺にミントのきつい視線が突き刺さる。
「信さま、変な臭いがするんですけど」
つっけんどんでわずかな硬さを感じる声に思わず「へ?」と喉から変な音が漏れた。
びっくりしている俺を他所に、ミントはふんふんと掌を嗅ぐと、俺の腕の中でくるりと向きを変えてもう一度ふんふんと鼻を鳴らす。
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