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0.01の距離 21

「ちょ やめっくすぐったいって!」  胸の辺りでもぞもぞと動きながら臭いを嗅がれると、妙にムズムズとしたくすぐったさがせりあがってくる。  必死に逃げようとしてみても、冷蔵庫と壁に挟まれているしミントの力は強いしでうまくいかない。 「なんで、こんなにオメガの臭いがしてんですか⁉」 「は? ニオイ? オメガの?」  そりゃ、お前と違って学校にバイトにと出歩いているんだからΩとも接点ができる……と言おうとしたところで、大学で佐久間と密着していたことを思い出した。  事情があったとは言え、抱き締めたりもしたんだから普段以上に佐久間のフェロモンが染みついているんだろう。 「あー……まぁ、そういうこともあるだろ」  ふんふんと臭いを嗅いでいたミントは、ちら と俺を見上げると刺々しい表情で「ふん」と鼻息を吐き出す。 「すっげぇ不細工な顔になってんぞ」 「は? なってませんけど? オレはいつだって可愛いでしょ」 「あーはいはい、可愛い可愛い。ミントは世界で一番可愛い可愛い」  柔らかで癖のある髪をぽんぽんと叩きながら宥めてやると、むふふーとちょっとご機嫌になる。  小さな子供をあやすようなこんな言葉が通じる辺り、なんともミントは単純だ。 「ほら、可愛いミント、退いてくれ。ご飯作るから」  押し倒す勢いでふんふんと臭いを嗅ぎ続けられて、さすがにちょっと恥ずかしいというか照れくさくなってくる。  体を密着させて、お互いの体温がわかるくらいの距離で好き勝手に臭いを嗅がれて……    バイトから帰ってきて、汗臭い身には羞恥が過ぎる。 「あ、でもなんかいい匂いもする!」 「やめろって」  みぞおちに顔を埋めてすぅ……と思い切り息を吸い込まれると、ひやりとした感触がすると同時に人の息の湿った感じもして、なんとも言い難い感覚は多感な年頃の俺には厳しい。  これ以上、こんなふうに戯れているとよくないことになりそうで、ミントを力ずくで押し退けた。 「ひゃ んっ」  きゃあ! とか、わぁ! じゃない悲鳴に、自分の手を見てみると丁度ミントの胸を押している。  ずっと着ているくたくたのジャージは生地が薄いせいかその下にあるものをはっきりと浮かび上がらせていて、指先につんと硬いものが当たっていた。 「ぁ、あ、あ、あ、っ   まこちゃ  っ」 「ちょ、お、前っなんで……っ下にシャツとか着てないのか⁉」 「せ、んたく、に、出してるんだもん」  押し退けるために突き出した手なのだから引けばいいだけの話なのに、どうしてだか俺の手は引かれないまま……むしろ布越しにその下にある尖りを探るように指先を動かしてしまっている。    

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