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0.01の距離 26
温かいってよりは熱い咥内は、薄いゴム一枚を隔てているとはいえぬるぬると蠢いて気持ちいい。
「は……? ミント、お前 何 やってんだよ」
動く舌にからかわれるように息が弾む。
ぐぽりぐぽりと生き物が立てるのかって思えるほどの粘ついた音と、ミントの鼻から抜けるすがるような呼吸音と……
「ちょ、 それ、や やばい、から」
なんでだ?
なんでミントの頭が俺の股間で懸命に動いているのかわからない。
細くてふわふわとした茶色い髪が揺れて、何かを堪えるように尻も揺れている。
小さな頃から一緒に過ごしてきたのに、初めて見る姿だった。
映像から流れるよりも生々しい水音に耳がぞわりぞわりと総毛立つ。
「ぅ゛っ……ミントっ……ミントっ!」
怒鳴り上げるように呼びながら、小さな頭を掴んで無理矢理に顔を引き離す。
そうすると俺のを咥えていた名残の唾液が長く銀色の糸を引いて、本当にミントの口の中に入ってたんだって教えてくる。
「信さま?」
どうして止められたのかわからないって顔で俺を見上げるミントの胸元はまだ乱れていて、白い喉元を見せていた。
白い肌に青く浮かんだ血管を見て噛みつきたいと思うのはαだからなのか、それともただ捕食者の本能なのかわからずに目が回りそうだ。
拭いきれずにわずかに涙を残した目元と、上気した頬と、唾液で潤った唇と……
「な、なんで 」
拒否ったのに逃げもせずにこんなことをしてくる理由がわからない。
「信さまはじっとしてて、そしたらオレ、いっぱい気持ちよくしちゃいますから!」
ね? というと同時に再びかぷりと先端を咥えられ、呻き声をあげてしまったけれどそれと同時に腑に落ちたものもあった。
『 ────信さま』
ミントは俺をそう呼んだ。
だからこれは、好きとかそう言ったもの以前に、ミントにとっては業務なんだ と。
ミントの父親が、親父が雇った家政婦であるように、ミントもただ雇われただけだからこんなことをしているんだと、納得してしまった。
小さい頃は俺の行動を報告するのが仕事で、今は……性欲処理というわけだ。
本番も、キスも嫌がった理由がわかって、すとんと胃に石を飲み込んだような感触がした。
熱いと思っていた咥内も、そうして考えてみれば嘘っぽい作り物のような気分がしてくる。
傍らに放り出されたコンドームの袋の毒々しい黄緑色を見て、改めて俺の持っているものと同じなのだと理解し直せば、ミントの雇い主も自然とわかるというものだった。
「 信さま?」
「……ミント、キスさせろ」
すっと引いていく熱を感じながら、そう命令した。
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