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0.01の距離 32

 オレが植え込みの間から見てるなんて思いもしないんだろう。  まこちゃんも身をかがめて隣のΩを引き寄せたりして…… 「……」  こんなことなら一緒に進学するべきだったのかもしれない。  まぁ、でも、成績の問題で同じ学校には行けなかっただろうから関係ないか……それよりも、旦那さまに言われたことに従ってればよかったって思う。 『どこの馬の骨に乗っかられるかわからんからその前に乗っかってこい』  親としてはどうかと思う発言だったけれど、ハニートラップを散々仕掛けられて全然そう言ったことに免疫のないまこちゃんを心配しての言葉なのはわかっていた。  でもオレとしてもなけなしのキョージというものがあるわけで…… 『どうせお前ら、引っ付くんだろう』 『そうだけどっ! オレはっ恋人に面倒を見てもらうようなアツアツな二人暮らしをしながら、初ヒートでラブラブなエッチがしたい、だから嫌ですっ!』 『認めない。行ってこい』 『やーでーすー!』 『童貞をこじらせると面倒くさい』 『オレがこじらせてるのは処女です!』 『そっちも面倒くさい』  お膳立てしてやるからという言葉も突っぱねて、泣きながら飛び出したけれど……まこちゃんの世界が広がるにつれて、オレ以外のΩとの接触が増えるんだってきちんと理解していなかった。  一度しか噛んで貰えないΩと違って、αはいろんなΩと番契約を結ぶことができるんだってことも。 「……だって、オレ以外のオメガを見るなんて思わないじゃん」    小中高もそうだしプライベートもずっと、オレ以外のΩは近くに寄らせもしなかった。  だから、オレが初めて発情期を迎えるまで、ずっとそうだと思ってた。  なんとなく、皆と同じように高校ぐらいで発情期が来てそのまま番になるのかなって思っていただけに、この年までこないなんてびっくりだ。  それでもまこちゃんの一番は俺だって思ってたのに…… 「……やっぱ……できそこないは、ダメなんかな」  まこちゃんの隣にいるΩはちょっとオレに雰囲気が似てて……まこちゃんがオレの代わりにしてればいいのにって、昏い考えがよぎる。  そう思うと自分がΩとしても人間としてもダメなんだって、わかってしまった。  楽しそうに話をしながら行ってしまったまこちゃんを眺めて、すごすごとしっぽを丸めて帰るしかないオレは立ち上がった。 「  ────れ?」  ふわっとした感覚にたたらを踏んだ。  長いこと植え込みの中で座ってたから立ち眩みでもしたのかもしれない、食事もしてないし、貧血の一つも起こるだろう。

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