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0.01の距離 36
体の中から沸き上がる熱に思考が焼かれてしまう前に……
オレはこの状況を何とかしなきゃって首を振った。
「く、ち。お願い……っ、口で、最初に するから 」
ぶるぶると震える手で抵抗ではなく縋るように男を掴む。
「いきな り、入れられる、と、長くでき、ないから、……ね?」
ひきつる唇でなんとか笑みの形を作り、男達が文句を言い出す前に覚悟を決めて膨らんだ股間に触れた。
興奮しているのか目の前の男の股間はもう硬くて、熱くて……まこちゃんと同じもののはずなのに、Ωのフェロモンに興奮してるんだって思うと気持ち悪くて仕方がなかった。
それでも、これはもしもの時のためにΩが教わる最悪を回避するための技術だ。
『もしも、最悪が起こりそうなら』
そうならないように少しでもマシになるように、Ωが受ける講習がある。
「オレ……こっちがうまい、って っ」
最悪、首筋を噛まれないように。
最悪、孕まされないように。
最悪、犯されないように。
少しでも助かるための時間稼ぎと、一度出せば落ち着くαもいることもあるから……
「フェロモンで、ヤる前に暴発するより よくない?」
人差し指と親指で輪を作り、ペロリと舌を出してみせる。
実際うまいなんて誰にも言われたことがないし、この間のまこちゃんとのことがオレの初フェラだ。
男達はちょっと視線で窺うようにお互いを見て、もじ……と腰を揺する。
「ど、どうするよ?」
「いや、でも……」
ひそひそと言い出した男達の手が緩む。
元気だったなら飛び出して逃げれるんだろうけど、脳味噌が湯掻かれてるのかってくらいぐらぐらの頭じゃ真っ直ぐに立つことも難しい今は、何もできない。
もしかしたら騒ぎを聞いて通報してくれてるかもって期待するか、監視カメラに映ってて警備員が来てくれるって期待するか……
念のためにとジャージのポケットに入れてあるコンドームの袋は一個だけで、この二人を相手にするには数が足りない。
まこちゃんが、来てくれないかなって淡く思うけど、今頃あのΩと楽しく過ごしているのだから絶対に無理だろう。
こんな風に初めての発情期でレイプされるなら、あの時にまこちゃんとの初めてを経験しておけばよかった。
そうすれば……ちょっとは慰められたかな?
「どっちにしろめちゃくちゃにしちゃうしー?」
「噛んじゃえばうるさいことなんて何も言えないだろ?」
ぞっとするようなことを言う。
最終目標を噛むことに決めつけているαを相手になんかしてられない! 時間稼ぎをしても媚びを売ってもこの男達はオレを犯すし、首筋を噛む気だし、孕ませる気だった。
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