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0.01の距離 43
傷をつけられるってことに怖さがなかったわけじゃないけれど。
それでも、大きな体をかがめるようにしてオレの首筋に歯を立てるまこちゃんが愛おしかった。
ぱたぱたぱた と微かな足音が近づいてくるから、隣で正座しているまこちゃんの背筋がぎゅんって伸びる。
おとうさんが隙なく掃除した和室は整っていて綺麗で広くて……隣で座ってるオレも落ち着かない。
「まこちゃん、ミントくん、お待たせしてごめんね」
小さく肩を竦めながら入ってきたのは奥様で、滑らかな動きでオレ達の前に正座する。
「今、お父さんが全部の後始末してくれてるからね」
「あ……うん……」
「ありがとうございます」
元々シェルターは突発的な発情に陥ったΩが自分だけでなく他の人も傷つけないために入る場所で、αはちょっとでも入っちゃダメってルール……法律? があったりする。
つまり、今回のオレとまこちゃんのことは完全にルール違反だ。
どうなるかって言うと、シェルターに入ったαは処罰される。
懲役何年とか罰金がとからしいけど……今回はオレと以前から同棲していたことと、お互いの両親が番になることを了承していたこと、後は同意があったって証明されてオトガメなし……に近い感じで落ち着いた。
それに加えて壊した教室のドアとか備品とか、自業自得だけどケガをしたあの強姦魔たちのこととかで、旦那さまがいろいろと手を回してくれた らしい。
「えっと、父さん。ミントが俺の番になってくれた から、報告しとく」
「おめでとう。でもそれはお父さんが来てから話そうか」
「う゛……親父 は、いつ帰ってくるの?」
まこちゃんはそわ と落ち着かないままに言うと、目をきょろきょろと動かす。
「今、大学の方から帰ってきてるって連絡があったから……もう少ししたらかな?」
「うぇ……」
顔色を悪くするまこちゃんの手を握ると、身を縮めて困った顔で握り返してくる。
「俺にもしもがあったら、父さんが力になってくれるしっ俺はずっと傍に居てミントを見守ってるからな!」
「なんでそんな話になってんの?」
手は汗でぐっしょりで、こんな緊張したまこちゃんを見るのは初めてだ。
確かに旦那さまはおっきくて怖い人だけど、自分も同じような顔してるんだから何も問題はないと思うのに……
あと意外と、旦那さまは怖くない。
はぁーって溜息を吐いて項垂れると、首筋にぴりって痛みが走った。
手当はしてるけど昨日の傷が今日治るわけもなくて、まだまだきちんとかさぶたにもなってない。
首を動かす度に引き攣るみたいな痛みがあって、ゲームしてても気になっちゃって集中できないから困ってる。
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