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0.01の距離 44

 喉元を擦っているオレに、奥さまはにこにことした笑顔を見せてくれているけれど、実際はどうなんだろう?  旦那さまは言うに及ばず奥さまも社会的に凄い人で……クソクズから逃げて匿った親子に対して、思うところはないのかな?  使用人の子供となんて、普通は反対して泥沼になりそうなものなのに。  笑顔だけど本心はどうかなってそろりと見上げると、キラキラとした奥さまの目と視線が合う。 「おめでとう、体辛くない? 足は崩してていいし、楽な姿勢をとっていいからね」 「ぁ、はいっす」 「クッション持ってきてもらおうか? 椅子の方がいいかな? 円座座布団の方がいい?」  さすがに寝転がりたい とは言えなくて、ぷるぷると首を振った。  一応、反対ではないみたいだなってほっとしているところに、ミシミシと廊下が音を立て始める。    まこちゃんの体がビクンって跳ねて、見上げた顔の色がどんどん青くなって……白になった。   「  ────信」  戸が引かれるのと同時に名前を呼ばれてまこちゃんが飛び上がった  ────のではなく、吹っ飛んだ。  本当に吹っ飛んだ。  オレよりめちゃくちゃ大きなまこちゃんはもちろん体重だってめちゃくちゃ重い。  その体がぽん ってボールを投げたみたいに吹き飛ばされて、こだわって建てたんだろうなって思ってみてた細かな細工の欄間に足を引っ掻けつつ、襖を巻き込みながら隣の部屋まで転がっていった。  しこたま体のいろいろなところを打って、まこちゃんはひしゃげた襖の上から動けずに唸っている。 「わっ! もーっびっくりした」  呑気な声を上げる奥さまの隣に、岩の塊のような存在が腰を下ろす。  オレとまこちゃんも身長差がある方だったけど、旦那さま達はもっと身長差があって、二人並んだところを簡単に表現するなら凸凹だ。 「だ、旦那さま、お久しぶりでございますです」 「ああ、元気そうだな」  まこちゃんが年をとったらこんな感じなんだろうなって雰囲気の旦那さまは、手に持っていた紙袋をオレの方へと差し出してくる。 「な、なんですか?」  もしや手切れ金⁉ と息を飲みそうになる前に、「慰謝料だそうだ」と言葉が続く。 「慰謝料ですか?」 「ああ、お前を襲った奴らからだ。酷く反省していてな、それを渡して欲しいと頼まれた」  手の中にはずっしりとしたものが入っている袋がある。  怖かったけど確認しないわけにもいかず、紙袋をそっと開いて薄目で中を覗き……ひぃって声が出ちゃった。  これだけあれば、どのイベントでも好きなだけガチャ回せるじゃんっっ! 「足りないようなら追加で払わせる」 「ぇっあっ⁉ いえっ十分っ!」 「これからは金が幾らあっても足りなくなる、取れるところから取れるだけ取っておきなさい」 「……はぁーい」  

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