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落ち穂拾い的な ヒートの真相2

 少しおどけた口調でいうと肩を竦めてしまった。 「あそこの兄弟は全員、アルファ遺伝子の優性が強いからこんな芸当もできるんでしょう」 「そういうものですか?」  そんなことで解決できるような話ではないと思うが、長年祖父の助手を務めて来ただけあって自信はありそうだ。  阿川の言葉を鵜呑みにすることはできないけれど、今後も詳しく調べる必要があることだけはわかった。    ◇   ◇   ◇  旦那さまが乗るような車でお屋敷まで送ってもらって、運転手の人に深々と頭を下げてから離れへと向かう。  元々広いお屋敷はオレとまこちゃんが住む離れを一つ建てたくらいじゃ全然変化はない。  お屋敷は和風だったけど、若い子には洋風がいいだろうってことでここだけぽっかり洋風建築なのが笑えるくらいだ。 「たーだいま!」  とはいってもこの離れはオレとまこちゃん専用だから他に誰もいない。  旦那さまは使用人をって言ってくれたけど、家政婦の息子に使用人をつけるって何さ? って思って断った。  もちろん、その分家事は自分達でしなくちゃならなかったけど、真新しい家に自分とまこちゃんの匂いだけが満ちているのってすごく嬉しい。 「さて! 掃除しちゃうか」  あの古いアパートは狭くてまこちゃんがちゃちゃっと掃除してしまえば終わったけれど、平屋だけど寝室にリビングに書斎に……いろいろ部屋のあるここじゃちゃちゃっとは終わらない。  それに、大学と並行して旦那さまの会社にアルバイトにも行ってて……ものすごく大変そうだし、ここはメイドの本領発揮でオレが頑張るしかない!  まぁ、新築だし、お掃除ロボットはいるし、食洗器だし、服はクリーニングに出すって言われて回収されちゃうから実質やることはないんだけども。  フリルのついたエプロンを身につけて……何かすることないかなって部屋を見回る。  基本、オレが散らかしたものはまこちゃんが片づけちゃうし、ゲームは丁度イベントが終わったばっかりだからすることないし。 「うーん……安静にしすぎるのもよくないって言われてるしなぁ」  お産の時に体力がないと大変 と言われて、働こうって気にもなったんだけど。  そもそもすることがない。 「……ここ、もー……」  書斎とはいっても、要はまこちゃんの勉強部屋だ。  小難しそうな本が棚に並んで、デスクとパソコンと…… 「ブランケットだ」  少し休憩する時に枕代わりにでもしてるのか、ベージュの肌触りのいいそれはくるくると丸められて椅子の上に置かれていた。  別に立ち入り禁止ってわけじゃないけど、きょろきょろと左右を見渡してから中にささっと入ってブランケットを持ち上げる。  

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