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落ち穂拾い的な ヒートの真相3
別に悪いことをしようとしているわけではないのに、どうして周りを窺ってしまうのだろうか?
自分一人だけなのにきょろきょろと周りを見回してから、ブランケットにえい! と顔を埋めた。
安物じゃないふかっとした感触が肌に触れるけれど、それ以上にオレを幸せにしてくれたのはまこちゃんの残り香だ。
自分達で家事をしていたのなら洗濯物の一つでもくすねることができたんだけど、ここじゃクリーニングに出されてしまうからパンツ一つ盗めない。
クリーニングから戻ってきたらもう匂いは消えているし、ソファーやベッドは持ち運べない。
「これをこうしてっと」
ブランケットを頭から被り、ずれないように顎の下で括る。
きっと人が見たら変な目を向けてくるような恰好なんだろうけど、これですごく満足だ。
すーはーすーはー深呼吸をするだけでふわふわと幸せな気分になってくるから、きっとまこちゃんからはやばい成分が分泌されているんだと思う。
思わず笑顔を漏らしながら、オレができる家事はないかと部屋を見て回る。
「ホントに、オレの仕事ってないんだよねー」
母屋に行っておとうさんを手伝おうとするとめちゃくちゃに怒られるし……
独りぽつんとしていると、狭くて綺麗じゃなくてお風呂もなかったけれど、まこちゃんの匂いがいつもして引っ付いていられたおんぼろアパートの方が良かったように思えてくる。
ぐーたらしてて楽しいっていう思いも……なんだか今では色あせてしまって……
「まこちゃん 」
ぽつんと呟いたけれどもちろん返る返事はなかった。
◆ ◆ ◆
疲れ果てた体を引きずり、門から離れまでよろけながら歩く。
こんな時は自慢の広い庭が恨めしく思えてくる。
親父が建てるから と言った離れは俺たちが住んでいたアパート全体よりも大きくて、正直あの部屋に慣れた身には落ち着かない場所だった。
でも、ミントが以前不満を漏らしていた風呂もトイレも綺麗だし冷暖房も完璧、ついでに言うと産まれてくる子供にも配慮された造りになっていて、今後のことを思うと文句なしだ。
「でも 」
綺麗なそこはどことなくよそよそしくて、同じ空間にいるのに広いせいかどこか寂しい。
俺とミント以外は立ち入らないって約束を守ってくれているのに、空気に邪魔されるとは思ってもいなかった。
「ミント?」
ただいま と言いそうになって口を塞ぐ。
そういうものだと説明は受けていたが、ミントは最近よく眠る。
眠くて眠くてしかたなくて、抵抗できないまま寝ちゃうんだ……とあくびを噛み殺しながら言われていたから、今も寝ているかもしれない。
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