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落ち穂拾い的な ヒートの真相4
アパートにいたころはそんなことはなくて、家に帰るとすぐ目の前に眠っているミントが見えて、今日も健やかだったんだな 今日も何事もなかったんだなってわかってほっとする。
でもここでは確認までに時間がかかって、なかなかほっとはできない。
親父の口利きでよい会社にインターンシップに行かせてはもらっているが、拘束時間が長くてうんざりする。
「……疲れた」
狭くて汚くて隙間風もはいるあのアパートが恋しくなって……
関係性も変わって、俺とミントの立場も変わって、……以前より近くなったはずなのに、今のほうが遠い気がする。
一緒にいても、薄い膜で隔てられているような気分だ。
「どうしたら、この距離が埋まるかなぁ」
番になって、ラブラブな時期なのは間違いないのに……
「やっぱり親のすねをかじってる部分が良くないのか? 確かに何でも親に頼ってしまっているのは否めないし。だからって……」
じゃあここから出て、もっといい生活をさせてあげられるのかって言われたらできない。
不慮とは言え、望んでできた子にはできるだけいい環境で育って欲しいと思うのは、親の共通した願いじゃないだろうか?
「────ミント」
そろりと扉から部屋の中を覗く。
新婚の人間が住んでいるというのに、この家の間取りはそれぞれに寝室があるというプライベートに配慮した造りになっている。
ミントが寝ているのだとしたら、自分の部屋のベッドの上だろう。
そんなこだわりあったんだ⁉ って思わせせるくらい、丁寧に選んでいたふかふかの布団にくるまって寝ているに違いない。
その姿が、まるで冬眠中の小動物のように思えて可愛くてしかたない。
「みん 」
期待を胸に扉をそろりと開くけれど、部屋の中は静まり返っていてじめっとした涼しさまで感じるようだった。
「ここじゃないとなると 」
隣の俺の部屋の扉に手をかけると、中からくぅくぅと可愛らしい声が聞こえてきて、俺の番が俺の部屋にいるんだって教えてくれる。
「ミント」
幾度目かの呼びかけに、布団がもそりと動く……────けれど、あの頭はなんだ⁉
帽子ではない。
もこもことしたそれは……書斎で使ってるブランケットだ!
それを頭に、俺のベッドに入っているということは……
「ミント ……これ、巣作りか⁉」
思わず大きな声を出してしまうと、寝ていたらしいミントがびくりと顔を上げる。
妊娠したΩが防衛のために行うというその行動を、俺は初めて見た。
きゅん と胸が詰まるように痛んで、まるで矢を射られたかのようだった。
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