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はいずる翼 27

「あ……和歌の、すけべ」 「なんでだよ」  二人の間はほんのわずかで、唇の先端にはお互いを繋ぐように唾液が光っている。 「なんか……な、慣れてんなって  やから、  」  すけべ と言おうとしたが、慣れてるっていうことは経験があるってことで……和歌が一体何人とキスをしたのかって考えると、なんだか腹の奥がじくりと痛んだ気がした。  けしかけて、受け入れてもらえて嬉しかったはずなのに、びっくりするくらい大人の反応を見せられてしまって…… 「だから?」 「……やから、  」  ごめんの言葉は顔を反らしながら言った。  じゃれついている近所の子供がイタズラをした程度にしか思われてないんだろうって肩を落とす。  なのに、その落とした肩を引き寄せられて…… 「わっ」 「キスのうまさに経験値なんて関係ないだろ」  和歌はそう言うとぱくっとオレの唇に噛みついて、緩やかに吸いつくような刺激を与えてくる。 「にゃ、ぇ、か⁉」 「猫の鳴き声みたいだな」  あえか と名前を呼んだのにきちんと受け取ってもらえないままで…… 「必要なのは器用さだけだろ?」 「じゃ、じゃあ。練習はどうしたん?」 「こんにゃく相手にAVみながらした」 「うそ⁉」 「ホントホント」 「やったら ……オレにも教えて」  和歌はあははと笑いながら立ち上がると、オレを置いてさっさと台所に行ってしまう。  二度目のキスまでされて……ちょっと腹を括らなきゃいけない? って思っていたのが肩透かしを食らってしまった。  何をしているんだろうと様子を窺っていると、カチャカチャとお茶を淹れている音がしてくる。 「ほら、茶ぁ淹れてやったから飲め」 「ぅ゛……なんで急にお茶なん? てか、スルーせんといてや」 「無視できないからお茶飲んでんだろ」  先ほどまでの表情と違って、ちょっとむっとした顔で和歌はマグカップに湯を注ぐ。 「ほら、これ飲んどけ」  アツアツのお茶の入ったマグカップを押し付けると、和歌は引き出しからタバコを取り出してさっと口に咥えてしまった。  時折、吸ってる? って思うことはあったけれど、和歌が持っているところも吸っているところも見たことがなかったから、和歌の大学仲間が吸うんだとばかり思っていた。  シュ とライターに火がつく音がして、火の燃える臭いとそれを追いかけるようにして広がった煙の臭いが鼻先を漂う。 「あ、あえか⁉ タバコは吸わんって言ってたやん!」 「時と場合によるんだよ」  つっけんどんに返されて飛び上がったオレの前で、和歌は馴染まない臭いのタバコを肺いっぱいに吸い込んではゆっくりと紫色の煙を吐く。

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