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はいずる翼 32
「は ぅっ」
枕に押しつけているのにふいに体が跳ねて声が漏れる。
慌てて唇を噛んで堪えるも、止められない指がイジメるように気持ちのいい場所をぐりぐりと責め立てていく。
「 ゃ、 やっ 」
駆け上がってくるよくわからない感覚と足に籠る力に恐怖を感じて拒絶の言葉が零れるけれど、正直な体はもっと深く感じることのできる場所を求めて身もだえる。
ふぅふぅと荒い息を吐きながら腹の奥のじれったさに負けて、臍の下を指先で力を入れて擦った。
隔てられてはいたが圧迫感は確かに奥にある焦れた部分に届いて……その場所が確かに快感を拾う感触に、恐怖を感じて手を離す。
心臓は跳ね上がっているし、指先でイジメ続けた股間は痛いほど張り詰めていて重苦しい感覚からの解放を訴えている。
わかってはいた。
きっとその先に、自分が求めていた発情に関する出来事があるってことに。
だけどこれ以上の快感を追いかけるには、罪悪感と恐怖感がのしかかってくる。
「 ぅ、ぃた い 」
はれ上がりすぎて痛い股間に再び手を伸ばそうとしたけれど、快楽を追ってモヤがかかったように霞む脳内を思い出すと怖さが沸き上がって……
このまま快感を追いたいのに追う先にある世界に、オレは怖くて何もできなくなってしまった。
「ぉ゛」と漏れた自分の汚い声で意識がふと戻る。
激しく揺れる視界の中で、気を失ったままの方が幸せだったんじゃないかと考えながら、先程のような下品が喘ぎ声を出す。
真上で懸命に腰を振って汗をほとばしらせている男は、見覚えがなかった。
「 ぅ゛ン゛ っ、ぁ、だ、れぇ っ」
下から見上げているせいかたぷりとした顎の下が見え、太い指輪をはめた手がオレの腰を力任せに掴んで一気にガツガツと突き始める。
ひぃ とか、あ゛ とか肺が押されて形にならない音ばかりが零れて、男は散々腰を振り回して勝手に体内にザーメンをぶちまけると、いい運動をしたとばかりにさっさと体を離してベッドから降りていった。
一言で言うなら、樽。
今回の客はそんな体形ではなかった、背はもう少し高かったし何よりあそこまででっぷりとはしていない。
大神の鍛え上げられた彫像のような体を見たせいか、どの男を見ても貧相に見えて仕方がなかった。
小汚いおっさんの尻を追いかけるように視線を遣ると、向こうのリビングで男二人がバスローブでくつろぎながら酒を呷っているのが見える。
「 っ、高倉さまぁ? 基本、多人数はお断りしているんやけぉ?」
さっきまで好き勝手に体を弄ばれていたから、体中がガクガクと震えてうまく使えない。仕方がないからごろりと寝返りだけ打って、こちらを見てニヤニヤ笑うおっさんたちをひたりと見据えた。
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