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はいずる翼 35
震えて立ち上がり、今にも爆ぜてしまいそうなのにその先がどうしても受け入れられなくて……
「っ、 ふ、 っ 」
勉強もできなくて、バース性もΩで、その上に男として欠陥もある自分では和歌に見捨てられても当然だと痛感してしまって、震える体を抱き締める。
「 あえかぁ 」
鳴き声は押し殺せても和歌を求める声はつい漏れてしまう。
なんとなく避けられた状態じゃなくて、はっきりと迷惑だと言ってくれたら違っていたのかもしれない。
邪魔だとはっきりと言われなかったせいか、タイミングが悪かったのかな とか、避けたのは気のせいかな なんて言葉を往生際悪く繰り返してしまい、諦められないままだった。
優しくしてくれたというだけじゃない、傍に居る時の空気感やちょっとしたやり取りが嬉しく感じる。
隣にいると落ち着かないのに離れると更に落ち着かなくなってしまう。
いけないことだとは思いつつ、和歌の香りを嗅ぐと胸の内がくすぐったくて堪らなくなって。
傍に居るだけで幸せだったし、逆をいえば何があっても傍にいることができればそれでよかった。
「和歌の傍に、おれたらそれでええのに 」
そうすれば、どんなに虐げられても幸せだろう。
ず と鼻を啜って、涙を拭って立ち上がる。
幸いにもじめじめと泣いていたせいか体の昂りは冷めていた。
身なりを整えて個室の外に出る、幾ら下半身が落ち着いたとはいえ泣いていたために顔が汚れてしまっていて、鏡の中の顔の酷さに慌てて水道の方へと駆け寄る。
「ぅわっ! 洗ってごまかせるかなぁ ────っ!」
視界がぶれて鏡の中にいた自分が驚いた顔のまま消えた。
何が起こったのかと視線を向ける前に、壁に押さえつけられて頭を上げることができない。
「な っ」
なんですか? の声はさっと口を塞いできた大きな手に邪魔されて出ず、もご とわけのわからない呻き声に変わった。
熱かった顔が壁に触れて急に冷まされていく。
弾けるように鳴る心臓の音に耳が詰まって、どっと冷や汗が噴き出した。
「だ、れ、 」
「久しぶりだね」
後ろからぎゅっと押さえつけられながら言われても心当たりなんてない。
情けないことに、久しぶりと言えるほど親しい人がいないオレは、必死に記憶を手繰る。
「最近、電車ずらしたでしょ?」
耳元で尋ねてくる声に聞き覚えはあるか幾ら考えても答えは出なかった。
「だれ あんたなんか、 知らん 」
答えは出ないはずなのにぞわりと体中を駆けあがってくる悪寒には覚えがあって、自然と握り締めた拳が震え出す。
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