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はいずる翼 37
「はぁ……君の体は温かいね」
ねとりとした舌が首筋を這いあがる。
せり上がる吐き気に抗うことができずに体が魚のように跳ねた。
「熱を持つともっといい香りがしてきた……君、オメガだろ」
「 っ」
オレは首にネックガードをしていない。
Ωに対する偏見が極端なこの世の中では、ヘタに首を守るための防具をつけていると逆に危険だった。
それに、発情期じゃなければ噛まれたところで番にはならないのだから、オレには必要のないものでもあって……
「ニオイをつけてたアルファに噛まれてるのかと思ったけど、そうじゃないんだね?」
舌先が探るようにワイシャツの襟元を這いまわり、隙間を見つけては入る込んでくる。
ナメクジのような、それでいて生暖かくて粘液を伴ったそれは、醜悪な気持ち悪さの塊だ。
じわじわと男の唾液がシャツに沁み込むにつれ、生理的に顔をそむけたくなる口臭が鼻を突く。
「 ぅ゛」
男の手は幾ら弄っても立ち上がらない性器から手を離すと、わずかに染み出たぬるつきを指に絡めながら最奥をノックする。
「ひぃっ」
そこは、一人の時ですら触れなかった部分だ。
だってそこは排泄器官だって理解していたから、エロいことを目的で触る場所だなんてわかりもしなかったから。
「そ、 きた、な 」
「汚くない汚くない。ここは君のおまんこなんだから」
「お っそ、何言って 」
「ここにずぽずぽ僕のおちんこ挿れて気持ちよくなれるところだよ」
くち くち と男のどの指かはわからなかったが、奥まった敏感な箇所をからかうように触り続ける。
「っ っ、 」
「ふふ、乳首も尖ってきたね、可愛い」
熱い息がはぁと万感の思いを込めるように吐き出され、悪臭がさっと漂う。
「この中擦りながら、二つのちっさいイチゴちゃんをイジメあげたら、可愛く鳴いてくれるかな?」
「 ぃ、や だ」
「ええー? 僕もう、こんなになってるのに嫌なの?」
息が詰まりそうな男のフェロモンを感じて、目が回りそうになって膝から力が抜けてしまった。
ガクン と体勢を崩したオレを放すことなく、男は硬くなった股間を押し付けながら気持ちよさそうに「あぁ」と声を漏らす。
「ああ、そうだ!」
貧血のような心持で倒れかけたオレに股間をぐいぐいと押し付け、男はひらめいたとばかりにいそいそとオレのズボンと下着を乱し……
熱い塊を尻の間へと押し付けて来た。
感触は……芯のある柔らかなモノ。
保湿されていて、けれど皮膚が薄い。
火傷しそうに熱く、そしてぬめりを帯びている。
「ゃ、や……やだ なに、な、 やだ」
「騒いじゃダメだよ、君は電車の中でもいい子にできてただろ?」
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