428 / 698

はいずる翼 37

「はぁ……君の体は温かいね」  ねとりとした舌が首筋を這いあがる。  せり上がる吐き気に抗うことができずに体が魚のように跳ねた。 「熱を持つともっといい香りがしてきた……君、オメガだろ」 「 っ」  オレは首にネックガードをしていない。  Ωに対する偏見が極端なこの世の中では、ヘタに首を守るための防具をつけていると逆に危険だった。  それに、発情期じゃなければ噛まれたところで番にはならないのだから、オレには必要のないものでもあって…… 「ニオイをつけてたアルファに噛まれてるのかと思ったけど、そうじゃないんだね?」  舌先が探るようにワイシャツの襟元を這いまわり、隙間を見つけては入る込んでくる。  ナメクジのような、それでいて生暖かくて粘液を伴ったそれは、醜悪な気持ち悪さの塊だ。  じわじわと男の唾液がシャツに沁み込むにつれ、生理的に顔をそむけたくなる口臭が鼻を突く。 「  ぅ゛」  男の手は幾ら弄っても立ち上がらない性器から手を離すと、わずかに染み出たぬるつきを指に絡めながら最奥をノックする。 「ひぃっ」  そこは、一人の時ですら触れなかった部分だ。  だってそこは排泄器官だって理解していたから、エロいことを目的で触る場所だなんてわかりもしなかったから。 「そ、  きた、な 」 「汚くない汚くない。ここは君のおまんこなんだから」 「お  っそ、何言って  」 「ここにずぽずぽ僕のおちんこ挿れて気持ちよくなれるところだよ」  くち くち と男のどの指かはわからなかったが、奥まった敏感な箇所をからかうように触り続ける。   「っ  っ、  」 「ふふ、乳首も尖ってきたね、可愛い」  熱い息がはぁと万感の思いを込めるように吐き出され、悪臭がさっと漂う。   「この中擦りながら、二つのちっさいイチゴちゃんをイジメあげたら、可愛く鳴いてくれるかな?」 「 ぃ、や だ」 「ええー? 僕もう、こんなになってるのに嫌なの?」  息が詰まりそうな男のフェロモンを感じて、目が回りそうになって膝から力が抜けてしまった。  ガクン と体勢を崩したオレを放すことなく、男は硬くなった股間を押し付けながら気持ちよさそうに「あぁ」と声を漏らす。 「ああ、そうだ!」  貧血のような心持で倒れかけたオレに股間をぐいぐいと押し付け、男はひらめいたとばかりにいそいそとオレのズボンと下着を乱し……  熱い塊を尻の間へと押し付けて来た。  感触は……芯のある柔らかなモノ。  保湿されていて、けれど皮膚が薄い。  火傷しそうに熱く、そしてぬめりを帯びている。 「ゃ、や……やだ  なに、な、 やだ」 「騒いじゃダメだよ、君は電車の中でもいい子にできてただろ?」

ともだちにシェアしよう!